溶断とは?仕組み・種類・用途をわかりやすく徹底解説

金属加工基礎知識

溶断(ようだん)は、金属加工における最も基本的かつ汎用性の高い切断技術のひとつです。金属を溶かしたり燃焼させたりすることで切断するため、機械式切断では対応が難しい厚板や複雑形状にも適しています。近年ではレーザーやプラズマなどの高精度技術も普及し、産業界での用途はますます広がっています。

今日は、溶断の物理原理・各方式の特徴・設備の構造・用途・トラブル事例まで網羅的に解説します。

溶断とは?加工の原理を深掘り

溶断は、金属を高温熱源によって溶融(または酸化燃焼)させ、その溶融金属をガスやエアで吹き飛ばすことで切断線を形成する加工方法です。

溶断には大きく分けて二つの原理があります。

溶融溶断(Melt Cutting)

レーザー・プラズマなどが該当
熱源で金属を溶かし、圧縮空気/ガスで吹き飛ばす方式。

特徴

  • 金属種の制約が少ない
  • 熱影響はあるがガス溶断より少ない
  • 高速・高精度が可能

酸化溶断(Oxidation Cutting)

ガス溶断(酸素ガス溶断)が該当
高温で鉄を酸化→酸化物が溶けて吹き飛ばされる。

特徴

  • 厚板切断に強い
  • 材料が鉄系に限定される(ステンレス・アルミは不可)

溶断方法は熱源の種類により性能が大きく変わり、
精度・スピード・コスト・材料適性を基準に使い分けられます。

溶断の種類を徹底比較(最新設備にも対応)

ここでは代表的な溶断方式4つを、原理・構造・特徴・適合材料・得意分野まで詳しく解説します。

ガス溶断(酸素ガス溶断)

最も歴史が古く、厚板切断の王道技術として広く使われています。

原理

  1. アセチレンやプロパンで金属表面を予熱
  2. そこに高純度酸素を噴射
  3. 鉄が急激に酸化発熱し、融点以下でも切断が可能
  4. 酸化物(スラグ)を酸素流で吹き飛ばす

設備構造

  • トーチ(火口)
  • 酸素ボンベ
  • 可燃性ガスボンベ(アセチレン・プロパンなど)
  • レギュレーター
  • 切断テーブル

シンプルで故障が少なく、屋外でも使える実用性の高さが魅力。

特徴

  • 200mmを超える極厚板にも対応
  • 設備が安い
  • 切断速度は遅め
  • 熱影響層(HAZ)が広い
  • スラグ除去が必要

適した材料

  • SS400など一般鋼
  • ステンレス・アルミは不可(酸化反応が起きないため)

プラズマ溶断

高速・多用途・コストバランスに優れ、工場加工で最も広く使われる方式。

原理

アーク放電でガスをイオン化させ、15,000℃以上の高温プラズマ流で金属を溶融し、圧縮空気で吹き飛ばす。

特徴

  • レーザーより安価
  • ガス溶断より高速
  • 切断面が比較的きれい
  • 鉄・ステンレス・アルミすべて対応

弱点

  • レーザーほどの精度は出ない
  • アンダーカットが出る場合がある
  • 板厚が厚くなると、ビードが粗くなる

得意分野

  • 6~25mm程度の中厚板加工
  • 製造業の板金加工全般
  • FA装置部品・ブラケット・治具プレート

レーザー溶断(ファイバーレーザー対応)

薄板の精密切断で圧倒的な強みを持つ最新技術。

原理

レーザー光が金属に吸収され、局所的に高温になり溶融 → アシストガス(窒素・酸素)で吹き飛ばす。

特徴

  • ±0.05mm級の高精度が可能
  • バリが少ない
  • 自動化と相性が良い(夜間運転も可能)
  • 複雑形状・微細形状に強い
  • 厚板はプラズマやガスに劣る(20mm超は非効率)

使われるガス

  • 窒素:バリが少なく高精度
  • 酸素:切断スピード向上、ただし酸化膜を生成

素材によりガスを使い分けることで品質が向上。

得意分野

  • 精密板金
  • 電子部品
  • 薄板の量産加工
  • 自動車内装・外装部品

ウォータージェット(熱影響ゼロ)

溶断ではないが、熱変形を避けたい場合の代替技術として頻繁に比較されます。

特徴

  • 切削時の熱影響(HAZ)がゼロ
  • 樹脂・ゴム・ガラスなど金属以外も切断可能
  • 切断速度は遅め
  • 設備価格が非常に高い

溶断の用途を業界別に詳しく解説

溶断は多くの製造業・建設業で重要な加工工程となっています。

建築・土木・造船

  • 橋梁・鉄骨フレームの加工
  • 現場での解体・補修
  • 厚板の切断が多いため「ガス溶断」が中心

製造業(板金・FA装置・機械加工)

  • ブラケット・フレーム部材の切断
  • 装置パーツのプレート加工
  • 数量・精度に応じてレーザー・プラズマを使い分ける

自動車産業

  • 車体部品の形状切り出し
  • バンパー内部金属部の加工
  • 量産性の高いレーザーが主流

解体・メンテナンス

  • 古い設備・配管・橋梁の切断
  • 現場作業が多くガス溶断が活躍

溶断で発生するトラブルと防止策

現場では以下のような問題が生じる場合があります。

切断面のバリ・スラグ

原因

  • 速度不良
  • ガス圧不足
  • 焦点位置ズレ(レーザー)

対策

  • 適正条件の見直し
  • ノズル交換
  • ガス圧調整

熱歪み

原因:急激な加熱 → 冷却 → 収縮による変形
対策

  • 歪み取り治具の使用
  • クランプ位置の最適化
  • 予熱・後熱処理

切断精度の低下

対策:

  • レーザーなら焦点調整
  • プラズマはノズル・電極の消耗確認
  • 切断テーブルの水平度チェック

溶断加工を外注するときのチェックポイント

高品質・短納期を実現するには、加工会社に以下を伝えるとスムーズです。

  1. 材料種(SS400・SUS304・A5052など)
  2. 板厚
  3. 図面データ(DXF/DWG/PDF)
  4. 品質要件(精度・面粗さ・バリ取り有無)
  5. 数量・納期・再注文の有無
  6. 追加工(タップ・曲げ・溶接)を行うか

特に精密部品の場合、レーザー・プラズマの機種(2kW/6kW/12kWなど)で品質・速度が変わるため、設備情報もポイントになります。

まとめ:溶断は「厚板のガス」「高精度のレーザー」「万能なプラズマ」が基本

溶断は金属を溶かして切断する加工方法で、
用途に応じた使い分けが品質・コストに直結します。

  • ガス溶断:極厚板・屋外作業に最適
  • プラズマ溶断:速度・汎用性・コストのバランスが良い
  • レーザー溶断:薄板・精度重視・自動化に最適

産業界では目的に応じてこの3方式が併用されており、現在も技術は進化し続けています。

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