アルミニウムは軽量かつ耐食性に優れ、航空機、自動車、電子機器、建築資材など幅広い分野で利用される金属素材です。しかし、素材の特性を理解せずに加工すると、精度不良やコスト増、加工トラブルにつながることがあります。
今日は、アルミニウム加工の基本から、切削加工・フライス加工・板金加工まで工程別に詳しく解説します。各工程ごとのポイントや注意点、効率化のコツも紹介しているため、初心者から技術者まで役立つ内容です。
アルミニウム加工の基礎知識
アルミニウムの特性
- 軽量:鉄の約1/3の比重で、製品の軽量化に最適。
- 耐食性:酸化被膜が自然に形成され、錆びにくい。
- 熱・電気伝導性:放熱や電気伝導の用途に活用可能。
- 柔らかさ:切削性は良好だが、反りやバリの発生に注意。
加工で注意すべきポイント
- 切削熱により変形しやすい
- 柔らかいため工具の摩耗やバリ発生に注意
- 表面仕上げの均一化が難しい場合がある
これらの特性を理解した上で加工方法を選ぶことが、品質とコストの両立につながります。
切削加工の特徴とポイント
切削加工とは
旋盤やCNCマシンを用いて材料を削り出す加工方法で、複雑な形状の部品製作に適しています。
適したアルミ合金と工具
- 適合合金:A5052, A6061, A7075など
- 工具素材:超硬エンドミルやコーティング工具で摩耗軽減
- 刃先角度:アルミは柔らかいため鋭角の刃先で切削性向上
加工条件
- 高回転・低送りで切削熱を抑える
- 切削液使用で工具寿命延長と仕上げ品質向上
- 段取りを工夫し、変形を最小化
精度・仕上げ品質向上のコツ
- 工具の摩耗管理
- 片持ちや薄板の固定方法に注意
- バリ取りの追加工程を計画
フライス加工での注意点
フライス加工とは
エンドミルやフェイスミルで表面を削り、平面や溝を作る加工方法です。量産部品や複雑形状の加工に広く利用されます。
切削刃と加工方向の選定
- 上刃・下刃の選択でバリ発生を抑制
- 送り方向や切削深さの調整で反りを防止
バリの発生と対策
- 柔らかいアルミはバリが出やすい
- 切削条件の最適化や後処理(バリ取り、面取り)が重要
複雑形状加工のコツ
- 複数工程に分けて切削
- 固定治具でワークのブレを抑制
- CAMソフトで最適な工具パス設計
板金加工の基本と応用
板金加工とは
アルミ板を曲げ・切断・絞り加工する方法で、筐体やパネル製作に最適です。
加工時のひずみや反りの抑え方
- 曲げ半径と板厚のバランスを考慮
- 曲げ順序や固定方法を工夫
- 加工後の応力除去(焼きなまし)で変形を防止
材料厚さと工具の選定
- 厚板には専用プレスとダイを使用
- 薄板は切断時のバリやひずみに注意
- 工具摩耗が少ない加工条件で品質を維持
高精度加工のポイント
- 定規やゲージで曲げ角度・寸法を確認
- 小ロットでも精度管理を徹底
- CAD/CAMとの連携で寸法誤差を最小化
アルミニウム加工のまとめと選び方
- 切削加工:複雑形状の高精度部品向き
- フライス加工:平面や溝加工、複雑形状に対応
- 板金加工:筐体やパネル、薄板部品の量産向き
用途や求める精度、量産性を考え、最適な加工方法を選定することが重要です。また、加工中のバリ、変形、工具摩耗などのトラブルを事前に想定することで、コスト削減と品質向上が可能になります。



