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NAK55とNAK80の違いとは?樹脂金型材選びのポイント

金型

― 表面仕上げ・加工性・精度要求に応じた最適な選定を ―

樹脂金型の性能や寿命を左右する最も重要な要素のひとつが、使用する鋼材の選定です。特にプラスチック成形金型で広く用いられているNAK55NAK80は、どちらもプリハードン鋼でありながら、用途や特性に明確な違いがあります。

今日は、NAK55とNAK80の化学成分・物理特性・加工性・用途の違いを詳しく比較し、失敗しない金型材選びのためのポイントを解説します。

1. NAK55とNAK80とは?──共通点と基本概要

両者は大同特殊鋼が開発したプリハードン鋼で、金型製作において「焼入れ不要」の利便性から広く使われています。

項目NAK55NAK80
鋼種分類プリハードン鋼(ニッケル系)プリハードン鋼(ニッケル・アルミ系)
硬度(HRC)37〜4338〜43
状態焼入れ不要で使用可能焼入れ不要で使用可能
主な特徴高い切削性・良好な放電加工性優れた鏡面性・高硬度・耐腐食性
主な用途精密金型、機械部品光学部品用金型、外観重視の製品

【共通点】

  • 焼入れ工程不要 → 加工後すぐに使える
  • 熱処理による変形がない → 高精度加工が可能
  • 靱性が高く割れにくい → チッピングやクラックに強い

2. NAK55の特長と用途

✅ 特長

  • 高い被削性
    鋼材が比較的柔らかく、切削加工がスムーズ
  • 放電加工性
    加工面の変質層が浅く、後加工が容易
  • 硬度と靱性のバランスが良好

✅ 用途

  • 自動車部品の樹脂金型
  • 精密機械部品、治具、プレート
  • 試作金型や短納期対応の樹脂型

⚙ ポイント:金型数の多い量産ではなく、少量生産や試作に最適。後工程の工数を減らしたい場合に選ばれる。

3. NAK80の特長と用途

✅ 特長

  • 優れた鏡面性・光沢仕上げ性能
  • 耐腐食性あり(アルミ添加による効果)
  • レーザー彫刻や微細加工に対応しやすい
  • 気泡やガス抜けを抑える微細組織

✅ 用途

  • 化粧品容器・スマホ部品・透明樹脂の成形金型
  • CD・DVD、レンズ成形用金型
  • 精密外観部品の金型全般

⚙ ポイント:鏡面加工や外観重視の製品に強い。研磨性や微細加工対応が求められる現場での定番。

4. 加工性・鏡面性・放電加工性の違い

項目NAK55NAK80
被削性(切削加工のしやすさ)◯(やや劣る)
放電加工性
研磨性(鏡面仕上げのしやすさ)
表面光沢仕上げ
微細彫刻適性
対ガス腐食◎(優れる)

5. NAK55とNAK80の選定ポイント

使用シーン適した鋼材
精密金型・治具製作NAK55
放電加工の多い形状NAK55
外観品質が重視される製品(金型が鏡面必要)NAK80
ガス発生の多い材料(PVCなど)に対応する型NAK80
微細模様・彫刻がある金型NAK80
試作や短納期での加工NAK55

6. 成分比較:Ni系 vs Ni-Al系

元素NAK55NAK80
C(炭素)約0.15%約0.18%
Ni(ニッケル)約3.0%約4.0%
Al(アルミニウム)添加あり
Cr(クロム)少量少量
特性への影響加工性重視耐腐食性・硬度・光沢仕上げ性重視

※Al添加によって、NAK80は析出硬化型の強度向上酸化被膜の形成による耐腐食性を実現しています。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 金型がすぐ摩耗するのですが、NAK55とNAK80どちらが耐摩耗性がありますか?
➡ 一般的にはNAK80の方が硬くて摩耗に強いため、長期使用や高頻度成形には有利です。

Q2. NAK55でも鏡面仕上げできますか?
➡ 可能ではありますが、NAK80ほどの高品位な光沢は得られません。外観に厳しい製品はNAK80を推奨します。

Q3. レーザー加工を予定している場合はどちらが良い?
➡ 微細な彫刻を行うならNAK80が適しています。

まとめ:違いを理解して、最適な金型設計へ

比較軸NAK55NAK80
強み加工性・コスト鏡面仕上げ・耐腐食性
用途汎用金型・治具外観・透明部品の型
成形対象汎用樹脂透明・外観重視樹脂
成形頻度少量~中量中量~大量

NAK55とNAK80は「どちらが優れているか」ではなく、「どのような用途・条件に適しているか」で選ぶべき鋼材です。使用目的と成形条件に応じて最適な選定を行うことで、金型の寿命と成形品質を大きく向上させることができます。

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