PR

SKD61とSKD11の違いは?用途と性質を徹底比較|金型材料の選定に迷わない!

金属材料の基礎知識

金型設計・製作の現場で頻繁に名前の挙がる鋼材「SKD61」と「SKD11」
どちらもJIS(日本工業規格)で定められた工具鋼ですが、それぞれ「熱間ダイス鋼」「冷間ダイス鋼」という分類に分かれ、性能や用途が大きく異なります。

今日は、SKD61とSKD11の違いを化学成分、物理特性、熱処理、加工性、耐久性、コストなど多角的に比較しながら、「どんな場面でどちらを選べばよいのか?」をわかりやすく解説します。

1. SKD61とSKD11の基本的な位置づけ

◆ SKD61とは?

SKD61はJIS G4404規格に属する熱間ダイス鋼(Hot Work Tool Steel)のひとつで、海外ではAISI H13に相当します。
高温状態で使用される金型や工具に最適化された鋼材で、高温強度・熱間靭性・熱伝導性に優れています。

特に、アルミニウムやマグネシウムのダイカスト金型熱間鍛造用の型など、熱衝撃や温度変化が激しい現場での使用に強い素材です。

◆ SKD11とは?

一方、SKD11は同じくJIS G4404規格に属する冷間ダイス鋼(Cold Work Tool Steel)で、AISI D2に相当します。
非常に高い硬度(HRC60以上)を持ち、摩耗に強く、形状精度の要求される加工に適しています。

冷間鍛造、プレス加工、裁断など、常温環境での加工に特化した金型材で、切れ味と長寿命が強みです。

2. 化学成分の詳細比較

鋼材の性能は、その化学成分(合金元素)によって大きく左右されます。
以下の表にSKD61とSKD11の主な成分をまとめました。

元素SKD61(H13)SKD11(D2)
C(炭素)約0.38%約1.55%
Si(ケイ素)約1.0%約0.3%
Mn(マンガン)約0.4%約0.4%
Cr(クロム)約5.2%約12.0%
Mo(モリブデン)約1.3%約0.8%
V(バナジウム)約0.9%約0.3%

ポイント解説:

  • 炭素量が多いSKD11は、焼入れ後に非常に高い硬度を得られ、摩耗に強い鋼材となります。
  • クロム含有量が高いSKD11は、耐食性・耐摩耗性に優れるが、靭性には劣ります。
  • モリブデン・バナジウムをバランスよく含むSKD61は、高温環境での耐久性・靱性に優れた特性を発揮します。

3. 機械的性質と耐久性の違い

項目SKD61SKD11
硬度(HRC)50~5558~62
耐熱性◎(〜600℃)△(〜200℃程度)
耐摩耗性
靭性
加工性△(硬化後は難加工)
寸法安定性

SKD61は高温でも寸法変化が少なく、割れにくいのが特長です。
SKD11は常温での高硬度・耐摩耗性に特化しており、寿命の長い冷間金型に適しています。

4. 熱処理特性の比較

● SKD61の熱処理

  • 焼入れ温度:約1020〜1050℃
  • 焼戻し温度:500〜600℃
  • 使用後の寸法変化が小さく、熱間での使用でも形状安定性を保持

● SKD11の熱処理

  • 焼入れ温度:約1020〜1040℃
  • 焼戻し温度:150〜200℃
  • 高硬度(HRC62)を得られる反面、熱衝撃や欠けに弱いため取り扱いに注意が必要

5. 主な用途の違いと適材適所の選び方

用途分類SKD61が適する場合SKD11が適する場合
金型熱間鍛造金型、ダイカスト型プレス金型、抜き型、裁断型
切断工具熱間せん断刃物スリッター刃、シャー刃
成形工具押出しダイス冷間成形型
製造環境高温(500℃以上)常温または中温

ポイント:

  • 高温での使用 → SKD61
  • 精密で耐摩耗が重視される → SKD11

6. コストと加工性の違い

SKD61の方が比較的加工性が良く、靭性が高いため破損しにくく、長期的に見た運用コストを抑えやすい素材です。

一方、SKD11は初期コストが高めであり、熱処理や研磨など高度な加工技術が必要な場合が多くなりますが、摩耗しにくく、交換頻度が少ないため大量生産向けに適しています

7. SKD61とSKD11の選定ポイントまとめ

✔ SKD61が最適なケース

  • 熱間鍛造やダイカストなど、高温・高圧での成形が必要
  • 熱割れ、熱疲労を避けたい
  • 衝撃や変形に強い金型が必要

✔ SKD11が最適なケース

  • 精密な冷間加工(金属プレスや抜き打ち)を行う
  • 高い耐摩耗性と寸法精度が求められる
  • 長寿命な刃物・金型を求めている

8. まとめ|現場のニーズに合った鋼材選びを

金型や工具の性能を最大限に発揮するには、用途と条件に最適な鋼材を選ぶことが最重要です。
SKD61とSKD11は、それぞれ得意分野が明確に異なるため、目的と環境に応じた選定が製品寿命と品質を左右します。

どちらを選ぶべきか迷ったときは、専門家や材料メーカーに相談することが成功への近道です。

💬 お問い合わせ・ご相談はこちら

当社では、金型材選定・加工・熱処理に関する技術サポートを承っております。
用途や生産量、予算に応じた最適な提案が可能です。
お気軽にお問い合わせください。

タイトルとURLをコピーしました