射出成形とは?プラスチック製造の中心技術

射出成形(Injection Molding)は、プラスチック(樹脂)を用いた製造方法の中でも、最も普及している加工技術のひとつです。
溶かした樹脂を高圧で金型に流し込み、冷やして固めることで、高精度かつ大量に製品を作ることができます。
現代社会において、射出成形によって作られた製品は至るところに存在します。
たとえば、
- 自動車内装のパネルやバンパー
- スマートフォンの外装
- 生活家電(冷蔵庫、エアコンなど)の部品
- 医療機器の精密パーツ
など、幅広い分野で活用されています。
なぜ射出成形が選ばれるのか?主なメリット
射出成形がこれほど広く普及している理由は、以下のような圧倒的なメリットがあるからです。
1. 大量生産に向いている
金型さえ作れば、何万個・何十万個でも同じ製品を短時間で成形できるため、1個あたりのコストが劇的に下がります。
2. 高精度・複雑形状に対応できる
複雑な3D形状や極小部品でも、一体成形が可能。寸法精度も非常に高いため、後加工がほとんど不要です。
3. 材料選択の幅が広い
ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレンなど、用途に応じて最適な樹脂を選択できるため、強度・耐熱性・透明性などさまざまな要求に応えられます。
射出成形の基本工程を徹底解説!
射出成形は大きく「5つのステップ」で成り立っています。それぞれの工程について、さらに詳しく見ていきましょう。
1. 材料投入と溶融
- ペレット投入
成形材料となるプラスチックペレットをホッパーに投入。 - 加熱・可塑化(かそか)
加熱シリンダー内で、スクリューが回転・前進しながらペレットを加熱し、均一な溶融状態(ドロドロ)にします。
👉 ポイント:可塑化不足や材料劣化に注意!
2. 射出・充填
- 高速射出
溶けた樹脂をスクリューで押し出し、超高圧(数百~数千bar)で金型内へ一気に充填します。
👉 ポイント:流動バランスや金型ゲート設計が品質に直結!
3. 保圧(ほあつ)
- 成形品の収縮補償
充填直後、樹脂は冷却に伴い収縮します。
これを防ぐため、保圧(一定圧力をかけ続ける工程)が必要です。
👉 ポイント:保圧設定が甘いとヒケ(へこみ)不良の原因に!
4. 冷却
- 製品形状の固定
金型の冷却水路を通じて樹脂を冷却し、固体状態に固定します。
👉 ポイント:冷却不十分だと歪み・反り・バリ発生のリスク大!
5. 離型・取り出し
- 金型開放・製品取り出し
固まった製品を金型から取り出します。ロボットによる自動取り出しが一般的です。
👉 ポイント:離型角・エジェクタピン設計が重要!
射出成形に使われる代表的な材料
用途や求められる特性に応じて、さまざまな樹脂材料が使われます。
材料 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
ABS樹脂 | 衝撃に強く、加工性が良い | 家電筐体、車内装 |
ポリカーボネート(PC) | 高透明・高耐衝撃 | 光学レンズ、ヘルメット |
ポリプロピレン(PP) | 軽量で耐薬品性が高い | 食品容器、パイプ |
ナイロン(PA) | 耐摩耗性・強度に優れる | ギア、機械部品 |
PBT樹脂 | 耐熱性・電気特性が良い | コネクタ、電子部品 |
射出成形で発生しやすいトラブルと対策
1. ショートショット(充填不足)
原因
射出圧力不足、金型温度低すぎ、流路設計ミス。
対策
射出速度アップ、金型温度調整、ゲート・ランナー最適化。
2. ウェルドライン(樹脂の合わせ目)
原因
溶融樹脂の合流部で十分な融着がされない。
対策
金型温度を上げる、射出速度を上げる、材料選定を見直す。
3. ヒケ(収縮によるへこみ)
原因
肉厚部分の冷却不良、保圧不足。
対策
肉厚設計の見直し、保圧時間の延長、ゲート位置変更。
射出成形金型の基本構造も知ろう!

金型は、単に樹脂を流し込むだけのものではありません。高精度な成形を支えるため、非常に精密な構造になっています。
- キャビティ(製品側の型)
- コア(裏側の型)
- ゲート(樹脂の流入口)
- ランナー(樹脂の通路)
- 冷却水路
- エジェクタピン(取り出し用ピン)
金型設計の良し悪しが、そのまま製品の品質と生産コストに直結します。
射出成形を成功させるカギとは?
最後に、初心者が押さえるべき射出成形成功のポイントをまとめます。
✅ 材料特性を正しく理解する
✅ 適切な金型設計を行う
✅ 射出速度・圧力・温度を細かく最適化する
✅ 成形条件をきちんと記録・管理する
✅ 問題発生時は迅速に原因分析・対策する
射出成形は、シンプルに見えて高度な「ものづくり技術」の結晶です。
基本をしっかり学び、実践で経験を積むことで、より高品質な製品づくりに挑戦できるでしょう!