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プレス金型の設計基礎:順送プレス、単発プレスの使い分けを徹底解説!

金型

製造業における「プレス加工」は、金属部品の量産性・コスト削減・加工精度を両立させるうえで非常に重要な加工法です。中でも、プレス加工を効率よく行うために欠かせないのがプレス金型の設計であり、その方式には「順送プレス金型」と「単発プレス金型」が存在します。

両者には大きな違いがあり、用途や目的に応じて使い分けることが、製品の品質とコストに直結します。今日は、初心者から設計者レベルまで理解できるよう、順送と単発それぞれの特徴・仕組み・選定基準・実際の設計注意点までを網羅的に解説します。

そもそも「プレス金型」とは?

プレス金型とは、金属板を打ち抜いたり、曲げたり、成形したりするための工具です。金型には「上型(パンチ)」と「下型(ダイ)」がセットで構成されており、機械の力で上下させることで、金属板にさまざまな形状を与えます。

主なプレス加工の種類

  • せん断(打ち抜き)
  • 曲げ
  • 絞り(深絞り)
  • 穴あけ、切り欠き、切断などの複合加工

これらを効率的に行うための金型の設計が、順送式か単発式かによって変わります。

順送プレス金型の構造と仕組み

順送プレス金型は、1枚のコイル材を順番に送りながら複数の加工を一気に行うタイプの金型です。加工ステージが並列に並んでおり、プレス機が1回動作するたびに、素材が一つずつ次の工程へと進みます。

構成例(5工程順送金型の例)

  1. 材料の送り
  2. 位置決め穴の打ち抜き
  3. 曲げ
  4. 切り欠き
  5. 製品の打ち抜き(完成)

このように1ストロークで連続的な加工が進み、**非常に高いタクト(生産スピード)**を実現します。

順送プレスの導入メリット

  • 人手がほぼ不要な全自動運転
  • 1型で複数工程をまとめて管理可能
  • 材料ロスが少なく、歩留まりが良い
  • 高い加工精度と安定した品質

注意点・デメリット

  • 金型構造が複雑で、設計と製作に時間とコストがかかる
  • 工程変更が難しく、設計の自由度は低め
  • プレス機には高精度な送り装置が必要

単発プレス金型の構造と仕組み

単発プレスとは、1つの金型で単一工程のみを実行する加工方式です。例えば、ある金型では穴あけ、別の金型では曲げ、といったように、工程ごとに異なる金型を使い、手作業または搬送装置で工程を移動させながら加工を進めます。

単発プレスの運用例

  • 工程①:せん断加工
  • 工程②:曲げ加工
  • 工程③:切り落とし

各工程が独立しているため、設計や調整の自由度が高いという特徴があります。

単発プレスのメリット

  • 初期費用が低く、小ロット向け
  • 工程ごとの品質確認が可能
  • 深絞りや複雑形状に対応しやすい
  • 設計変更への柔軟性が高い

デメリット・注意点

  • 段取り替え・搬送の手間が多い
  • 品質が作業者スキルに依存しやすい
  • 大量生産には不向き

両者の比較と使い分けポイント

項目順送プレス金型単発プレス金型
適応ロット数中〜大量生産向き少量〜中ロット向き
金型コスト高額(複雑構造)低コスト(構造が単純)
設計自由度低い(工程変更が困難)高い(個別工程で調整可能)
生産性非常に高い(自動化可能)中〜低(手作業や半自動)
品質の安定性高い(自動加工により均一)スキル依存(管理次第で高品質も可能)
初期リードタイム長い(設計・製作期間が必要)比較的短い
設備条件自動送り装置などの専用機が必要汎用プレス機でも対応可能

設計段階での選定フロー

  1. 年間生産数の見積もり
    • 5,000個未満 → 単発プレスが現実的
    • 10,000個以上 → 順送プレスの導入検討
  2. 製品形状と加工内容の確認
    • シンプルな打ち抜き/曲げ:順送
    • 深絞り、複雑曲げ:単発(またはトランスファープレス)
  3. 納期・初期費用に対する優先順位
    • 初期投資が抑えたい → 単発
    • ランニングコストを重視 → 順送
  4. 工程の将来的な変更可能性
    • 頻繁に図面変更がある → 単発が有利

よくあるミスと改善ポイント

  • とりあえず順送にしようとして、金型費用が予算を超える
    → 製品数・将来の量産計画を見直す
  • 単発でスタートしたが、量産に移行できず再設計が必要に
    → 初期設計時点で将来の拡張性を考慮する
  • 試作〜量産で金型方式を段階的に切り替える
    → 初期は単発、量産化段階で順送設計を再構築するハイブリッド戦略が有効

まとめ:金型設計は「製品の未来」を決める重要な意思決定

順送プレスと単発プレスの選定は、ただのコストや精度の話にとどまりません。それは製品の生産戦略そのものであり、設計段階からしっかりとした判断が求められます。

当社では、試作段階から順送設計・量産立ち上げ支援まで一貫対応しております。製品仕様やロット数、納期のご要望に合わせて最適な加工方式をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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