~金型・精密部品加工で差がつく仕上げ技術~
放電加工(EDM)とは?
放電加工(Electrical Discharge Machining、EDM)は、電極と被加工材の間に発生する微小な放電現象を利用して金属を溶融・除去する非接触型加工法です。切削加工では困難な超硬材・焼入れ鋼・難削材の加工や、複雑形状・微細加工が可能であることから、金型製作や精密部品製造で広く用いられています。
しかし、放電加工の仕上がりは「表面粗さ(Ra値)」と「寸法精度」によって評価されます。これらを高めるには、加工条件の最適化・電極設計・仕上げ工程の管理が極めて重要です。
放電加工の表面仕上げを左右する要素
放電エネルギーとパルス制御
- 粗加工(荒取り)
高エネルギーで放電し、金属を一気に除去。放電痕が大きいため、表面は粗い。 - 中仕上げ
エネルギーを下げて放電痕を小さくし、表面を均一化。 - 仕上げ加工(ファイン仕上げ)
微小エネルギーと短いパルス幅で放電。放電痕を極小化し、鏡面仕上げを実現。
最新のEDMではナノ秒単位でパルスを制御できる装置も登場しており、Ra0.1μm以下の仕上げも可能です。
放電液(加工液)の管理
放電液は、加工部における放電痕の形成や微粒子の洗浄に重要な役割を果たします。
- ゴミやカーボン粉が残ると放電が不安定になり、表面が荒れる
- 定期的なフィルタ交換・循環管理が必須
また、ワイヤーカット放電加工では加工液の流れがワークを冷却し、寸法変形を防ぐ効果もあります。
電極材質と加工精度
電極は「放電痕を転写する」ため、材質と表面状態が仕上がりに直結します。
- 銅電極:仕上げ加工向き。放電痕が小さく、鏡面仕上げがしやすい。
- グラファイト電極:粗加工向き。消耗が少なく、耐熱性に優れる。
- 銅タングステン電極:高精度かつ微細な仕上げ加工に最適。
電極表面は鏡面研磨が必須。微細加工では、電極のわずかな傷も仕上げ面に影響します。
表面仕上げ・精度を高める具体的な方法
加工ステップを段階的に設定
放電加工は一度の加工で仕上げを完成させるのではなく、粗取り → 中仕上げ → 精仕上げ → 仕上げ放電の複数工程を踏むことが基本です。
- 粗取り:形状を大まかに削り出す。
- 中仕上げ:表面の大きな凹凸を整え、精度を近づける。
- 仕上げ放電:微小放電で表面を整え、鏡面化。
微細パルス制御と極性設定
- パルス幅の短縮:放電痕を極小化し、Ra値を向上。
- パルス間隔の最適化:放電後の溶融金属を冷却・除去しやすくする。
- 極性設定:被加工材と電極の極性を逆転させ、消耗を抑えつつ表面を安定化。
熱変形対策
- 放電による熱でワークが膨張・変形することを防ぐため、加工室温度を一定に保つ。
- 長時間加工ではワークをクランプし直し、変形の影響を抑える。
仕上げ後の後処理
- 超音波洗浄でカーボン残渣を除去。
- バフ研磨・ラッピングで微小な凹凸をさらに整え、光沢のある表面へ。
精度を高めるための最新技術
自動補正機能付きEDM
加工中に寸法を計測し、補正をリアルタイムで反映できる放電加工機も登場。これにより、従来は難しかった「±1~2μmの精度」が可能になっています。
ナノパルス制御
パルス幅をナノ秒単位で制御し、放電痕を極小化。金型の鏡面仕上げ、医療部品の微細加工など、高度な分野で採用が進んでいます。
まとめ
放電加工で表面仕上げ・精度を高めるには、
- パルス制御・加工液管理などの加工条件最適化
- 電極設計と鏡面研磨
- 段階的な仕上げ工程の実施
- 最新制御技術や後処理の活用
が重要です。これらを徹底することで、金型製作や精密部品加工における品質向上とコスト削減が同時に実現できます。


