亜鉛メッキとは?
亜鉛メッキは、鉄や鋼の表面に亜鉛の保護層を形成することで、錆び(腐食)から金属を守る表面処理技術です。亜鉛自体が犠牲防食作用を持つため、鉄より先に酸化して腐食を防ぎます。
亜鉛メッキの代表的な方法は以下の通りです。
- 電気亜鉛めっき(Electro-galvanizing)
- 電解液中で亜鉛を析出させる方法
- 膜厚:5~25μm程度
- 精密部品・薄板向け
- 外観が美しく、二次加工(塗装など)との相性が良い
- 溶融亜鉛めっき(Hot-dip galvanizing)
- 溶融亜鉛槽に部品を浸漬して膜を形成
- 膜厚:50~200μmと厚く、屋外・構造物向け
- 機械的強度や耐久性が高い
- 亜鉛ニッケル合金めっき
- 耐食性がさらに高く、自動車部品や航空部品向け
- 耐食寿命を長期化できる
亜鉛メッキ加工の工程とポイント
前処理
めっき前に、油脂や酸化膜を除去する前処理を行います。
- 脱脂処理:油や汚れをアルカリ洗浄で除去
- 酸洗処理:鉄の酸化物を除去
- 活性化処理:表面を活性化してめっきの密着性を向上
めっき処理
- 電気めっき:直流電流を流し亜鉛イオンを析出
- 溶融めっき:高温亜鉛槽に浸漬して厚膜を形成
後処理(仕上げ)
- クロメート処理:耐食性と防錆性を強化
- パッシベーション:白錆を抑制
- 塗装併用:外観改善や追加の耐候性付与
亜鉛メッキのメリット
- 高い耐食性
- 犠牲防食作用により鉄を長期的に保護
- 溶融亜鉛は厚膜で屋外耐候性に強く、20年以上の寿命が期待される場合も
- コストパフォーマンスに優れる
- 材料費が比較的安価
- 大量生産向きで、メンテナンスコストも削減可能
- 加工品への柔軟性
- 薄膜の電気めっきは精密部品、複雑形状、ねじ穴加工後でも対応可能
- 塗装や樹脂コーティングとの併用で二次耐食も実現
- 環境適応力
- 海岸地域や高湿度環境でも耐食性を維持
- 亜鉛ニッケル合金めっきはさらに耐酸性・耐アルカリ性に優れる
- リサイクル性・環境対応
- 亜鉛はリサイクルが容易で、環境負荷が比較的低い
亜鉛メッキのデメリット
- 膜厚の影響
- 厚膜は寸法精度や組み付け精度に影響
- 特にねじ・嵌合部品は加工後めっきを推奨
- 白錆・変色の発生
- 屋外での雨水や湿度により白錆が発生
- クロメートや塗装で対策が必要
- 耐摩耗性の限界
- 防錆に特化しており、摩耗や衝撃には弱い
- 摩耗部には追加の硬質コーティングが必要
- 処理可能サイズ・形状の制約
- ホットディップ槽の大きさで処理可能サイズが制限される
- 吊り具による跡、膜厚ムラの可能性
- 特殊条件下での劣化
- 酸性雨、塩水噴霧、極端な高温条件では耐食性が低下する場合がある
亜鉛メッキの用途と選定ポイント
主な用途
- 建築・建材:手すり、鉄骨、フェンス
- 自動車部品:シャーシ、ボルト・ナット、ブラケット
- 電気機器:配線盤、端子、金属筐体
- 工具・機械部品:耐食性を求める各種部品
選定ポイント
- 使用環境(屋内/屋外、湿度、塩分など)
- 要求耐食寿命(数年~20年以上)
- 部品形状・精度要求(精密部品、嵌合部品)
- 予算・量産性(電気めっき vs 溶融めっき)
- 二次処理の必要性(塗装・パッシベーション併用)
まとめ
亜鉛メッキ加工は、耐食性・コスト効率・加工柔軟性に優れる万能の表面処理技術です。特に鉄や鋼材の腐食対策として、建築・自動車・機械部品など幅広い分野で活用されています。一方で、膜厚管理や耐摩耗性、白錆への対応など、設計段階での注意点もあります。
用途や環境条件に応じて最適なめっき方法(電気めっき、溶融めっき、亜鉛ニッケル合金めっき)を選定することが、長期的な品質向上とコスト削減につながります。


