加工ひずみとは

金属加工基礎知識

素材ひずみ

金属素材は溶かした金属を圧延という加工方法を経て素材になっていきます。
その時金属を各々の厚みへと加工するために加熱して可塑性(変形しやすさ)が向上させ、延ばしやすくします。その上で圧力を加えて成形していき、冷却工程を通して完成となりますが、高温冷却、延ばしの工程中に残留応力が発生し歪みが起きます。
私たちはこれを素材ひずみと呼んでいます。素材ひずみは私たちではどうすることもできません。あるがままを受け入れて歪みとりの加工を施すか、あらかじめ熱処理にて残留応力を除去しています。

残留応力

残留応力は、材料内部に残る応力のことを指します。これは、材料が外部からの力や温度変化などによって一時的に変形した後も、元の形状に戻る際に残る応力です。残留応力は物理的な変形が見られなくても、材料内部での力のバランスが変わっていることを示します。

残留応力は様々な要因によって生じます。

  • 加工応力: 材料の加工(例: 熱間圧延、冷間加工、溶接、鍛造など)中に発生する応力が残留応力として残ります。特にプラスチックや金属の加工では、加工時の圧力や熱によって残留応力が発生します。
  • 熱応力: 材料が急激に冷却される際にも残留応力が発生します。例えば、溶接の際に溶接部分が急激に冷えると、冷却収縮によって応力が残ります。
  • 残留変形: 材料が一時的に変形しても、元の形状に戻れない部分があると残留応力が生じます。例えば、金属の部品が加工中に曲げられたり伸ばされたりすると、元の形状に戻れない部分が残留変形として残ります。

材料に残留応力が集中すると、疲労やひび割れの原因となることがあります。

加工ひずみとその要因

加工ひずみは、金属材料を加工する際に生じる変形のことを指してます。この歪みは、加工プロセスによって材料が内部的な応力を受けることで発生します。
加工ひずみは製品の品質や寸法精度に影響を与えますので、金属加工業では重要な問題です。

加工ひずみが発生する主な要因としては次のようになっています。

  • 切削や圧縮などの加工操作: 材料を切削したり、圧縮したりするときに、その部分に加えられる力や熱が材料の内部に応力を生じる。
  • 材料の特性: 使用される材料の種類や特性によって、加工ひずみが発生します。例えば、ステンレスは熱伝導性が低いために加工ひずみが生じやすいです。
  • 加工方法と条件: 使用される加工機械や工具、加工速度、温度などの加工条件が加工ひずみに影響を与えます。

加工ひずみ対策

加工歪みを管理し製品の品質を向上させることは可能です。当社のような加工業や製造業では、常に技術や工程の改善を行いながら、効果的な対策を実施しています。

加工ひずみを最小限に抑えるための対策は次のようになっています。

  • 適切な設計: 製品の設計段階で、加工歪みを考慮した設計を行います。例えば、寸法や形状に余裕を持たせたり、加工時に生じる応力を分散する構造を採用することが有効です。
  • 適切な材料の選択: 使用する材料の種類や特性を考慮し、加工歪みが少ない材料を選択します。また、特定の用途に適した特殊な材料を使用することも考慮されます。
  • 適切な加工条件: 加工時の条件(加工速度、切削量、冷却方法など)を適切に設定することで、加工歪みを最小限に抑えることができます。特に金属加工では、適切な切削速度や冷却方法が重要です。
  • 熱処理: 加工後の材料に対して適切な熱処理を行うことで、残留応力を軽減したり歪みを修正することができます。熱処理の方法や温度管理が重要です。
  • シミュレーションとテスト: CADやシミュレーションツールを使用して加工前に歪みを予測し、設計や加工条件を最適化することが有効です。また、加工後には歪みの測定や評価を行い、問題の特定と改善を行います。
  • 精密加工技術の活用: 精密加工技術や高度な制御システムを使用することで、加工歪みを最小限に抑えることができます。例えば、レーザー加工や精密成形などがその例です。

これらの対策を組み合わせることで加工ひずみを抑制し高品質な金属部品を作っています。

まとめ

金属は、加工性と実用性が優れている素材です。古代から現代まで広く普及しているのはそのためです。硬度や靭性、脆性、剛性、熱伝導性も化合物によって調整でき、またリサイクルもできる素晴らしい素材です。ただ、加工ひずみというものも課題として残っていて各企業が各々の経験の中から最小限に抑えるという作業を繰り返しノウハウとなっているのも事実です。
反りやひずみを防ぐためには、反りやひずみが発生する理由や、発生しやすい素材・形状を知りケースバイケースで最適な手段を選ぶことが大事になってきます。

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