はじめに|なぜ今、海外加工調達が注目されているのか?
グローバル化が進む製造業界において、海外加工調達はすでに「戦略的コスト削減」や「人手不足への対応手段」として広く活用されています。特に中小企業でも、設備投資なしで多様な加工に対応できるという点が大きなメリットです。
しかし、海外と一口に言っても、国や地域によって対応できる加工の種類や品質レベル、得意分野が異なります。加工の特性を理解せずに発注すると、「品質が想定より低い」「納期が遅れる」といったトラブルにもつながりかねません。
そこで今日は、海外加工調達で実際に依頼可能な加工の種類を詳しく解説し、国別の得意分野や依頼時の注意点を整理します。発注者が知っておくべき実務的な観点も網羅していますので、初めて海外調達を検討する方から、すでに運用中の方まで必見です。
1. 切削加工(CNCマシニング、旋盤加工)
◆ 特徴とメリット
切削加工は、金属・樹脂素材を削って目的の形状に仕上げる加工方法です。CNC制御による高精度な量産加工にも対応可能で、コスト面での優位性から海外委託が急増しています。
◆ 対応範囲
- CNCマシニングセンタによる3軸/5軸加工
- NC旋盤による回転対称部品の製作
- 小径から大物部品まで対応可
- タップ加工、ポケット加工、面取りなど二次加工
◆ 得意地域
- 中国(江蘇省、広東省):高精度加工や難削材対応も可能
- ベトナム・タイ:低コストで安定した品質
- インド:大型部品や簡易形状に強み
◆ 注意点
- 寸法公差はμ単位まで明記
- 材料証明書(ミルシート)の取得可否
- 3次元モデル(STEP/IGES)を活用した仕様伝達が効果的
2. 鋳造加工(砂型・金型鋳造、ロストワックスなど)
◆ 特徴とメリット
鋳造は、溶かした金属を型に流し込み、固化させて形状を得る加工方法です。複雑形状や一体成形が可能で、特に大型・中空部品では大きなコストメリットを発揮します。
◆ 鋳造の種類
種類 | 特徴 |
---|---|
砂型鋳造 | 少量対応可。柔軟性が高い |
金型鋳造(ダイカスト) | 精度・外観に優れる。大量生産向け |
ロストワックス鋳造 | 高精度小型部品に最適 |
シェルモールド鋳造 | 中規模生産に適応、精密性◎ |
◆ 得意地域
- 中国(山東・河北・浙江):長年の鋳造技術とコストメリット
- インド:FC・FCDなどの鋳鉄系部品に強い
- タイ・ベトナム:アルミ・亜鉛ダイカスト
◆ 注意点
- 気泡・巣(空洞)発生の防止対策
- 型費用と納期(初回リードタイムは2〜3ヶ月)
- シュリンク率の計算ミスに注意
3. 樹脂加工(樹脂切削、射出成形)
◆ 特徴とメリット
樹脂部品は、軽量で耐薬品性や絶縁性を持つことから、電気・医療・自動車など幅広い業界で使用されます。海外では小ロットの切削加工から量産成形まで柔軟に対応できます。
◆ 主な材料
- エンプラ系:POM、PA、PBT、PC、PEEK
- 汎用樹脂:ABS、PP、PE、PVC
- 特殊用途:PTFE、PVDF、ESD対応樹脂
◆ 加工方法
- 樹脂用CNCマシニング(変形対策が必要)
- 射出成形(型代が安価)
- 真空注型(試作向け)
- 押出成形・ブロー成形(容器系)
◆ 得意地域
- 中国(深セン・蘇州):射出成形の金型技術が進化
- マレーシア・タイ:医療・電子部品用途に多い
- 台湾:小ロット高精度加工
◆ 注意点
- 金型素材・寿命の確認(P20・S45Cなど)
- ゲート位置・抜き勾配・パーティングラインの指定
- 使用樹脂グレードの明確な指定(RoHS, UL94規格など)
4. 板金加工(レーザー・タレパン・ベンダー)
◆ 特徴とメリット
板金加工は、精密筐体・ケース・フレームなどの製造に適した加工です。海外では最新のレーザー設備を保有している工場も多く、日本の図面通りに加工が可能な水準にあります。
◆ 主な加工工程
- ファイバーレーザーによる高精度切断
- タレットパンチプレス(タレパン)
- ベンダーによる曲げ加工
- 半自動/TIG溶接による組立加工
◆ 材料
SUS304、SPCC、アルミ5052、SECC、銅、チタンなど
◆ 注意点
- 加工順序・曲げ角度・R指定は必須
- 加工後の歪みチェック・補正要件
- 表面処理(ヘアライン、粉体塗装など)も含めた指定が可能か確認
5. 表面処理・熱処理
海外加工では、切削や鋳造後の表面処理・熱処理もセットで対応できる業者が増えています。トータルコストの最適化や納期短縮に貢献します。
◆ 表面処理例
- 電気亜鉛メッキ、黒染め、アルマイト、硬質クロム
- ショットブラスト、サンドブラスト、研磨
- 塗装(粉体・溶剤・電着)
◆ 熱処理例
- 焼入れ・焼戻し、調質
- 浸炭焼入れ、ガス浸炭、窒化処理
- サブゼロ処理、時効硬化など
◆ 注意点
- 処理後の寸法変化量を見込んだ設計
- RoHS・REACH対応の必要性
- 膜厚や硬度の測定証明書取得可否
6. 精密加工(ワイヤーカット・放電加工)
◆ 特徴
金型部品や高精度な機械部品においては、μ単位での精度管理が可能な放電加工・ワイヤーカットが必要となります。
◆ 加工方法
ワイヤーカット(切断幅0.1mm〜対応)
放電加工(放電痕の制御に注意)
ミーリングEDM(高精度微細形状向け)
◆ 得意地域
台湾・中国(東莞):金型部品の大量生産
韓国:精密加工・検査対応力に強み
◆ 注意点
加工時間が長く、費用が割高
加工後のバリ・加工痕の処理方法指定
素材硬度・熱処理状態の把握が必要
まとめ|海外加工調達を成功に導くには?
海外加工はコスト競争力を持ちつつ、加工の幅広さも魅力ですが、成功のカギは「仕様の明確化」と「信頼できるパートナー選び」です。
✔ チェックリスト
- 図面は日本語+英語/寸法単位はmmで統一
- 加工指示書やQC表を添付する
- 小ロット試作を経て本ロット発注する
- 品質トラブルに備えた検査体制を確認する
- 海外現地法人・商社経由の活用も視野に入れる
海外加工調達では、「何を」「どこで」「どのように」作るかによって適した業者が大きく変わってきます。
加工種別 | 得意地域 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
切削加工 | 中国・ベトナム | コストと納期バランス | 公差管理の徹底 |
鋳造 | 中国・インド | 大型・複雑形状対応 | 品質バラツキに注意 |
樹脂加工 | 中国・マレーシア | 成形〜仕上げ対応 | 材料の明示が重要 |
板金加工 | 中国・タイ | 幅広い加工設備 | 図面精度が命 |
表面処理・熱処理 | 東南アジア全般 | 一貫生産可能 | 品質管理・検査体制 |
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