はじめに|Tスロット加工の重要性とは?
Tスロット(T溝)加工は、治具設計・機械加工・装置設計などあらゆる製造現場で必要とされる加工の一つです。特に「ワークを正確かつ強固に固定する」「取り外しや再現性を高める」といった要求がある場合、このTスロットはなくてはならない存在になります。
金属加工の基礎知識として知っておくべきTスロット加工について、初心者の方にもわかりやすく、図面や使用例を交えながら詳しく解説します。
Tスロット(T溝)とは?構造と設計の考え方
Tスロットの定義
Tスロットとは、アルファベットの“T”字を横から見たような形状の溝加工です。
機械テーブルや作業台、治具などに多く採用されており、T字型のナット(Tナット)やボルトを使用して部品をスライド固定できます。
Tスロットの構造(断面図の解説
┌────────┐ ← 上部溝(ガイド部)
│ │
┌┴────────┴┐ ← 下部溝(ナット挿入部)
│ │
└────────────────┘
- 上部(ストレート溝):案内・スライド用
- 下部(広がり部分):ナットの頭部が通るクリアランス
Tスロットはこの二重構造によって、強固でフレキシブルな固定が可能になります。
Tスロット加工の具体的な手順
上部のストレート溝加工(通常のエンドミル加工)
まず、通常のエンドミルで「直線状の溝(ガイド部)」を加工します。溝幅や深さは使用するTナットに応じて設計されます。
下部の横広がり溝加工(Tスロットカッターによる加工)
専用のTスロットカッターを使用し、ストレート溝の下から左右に広がったT字部分を切削。片側切削となるため、負荷や工具の摩耗が激しい点に注意が必要です。
加工ポイント
| 工程 | 注意点 |
|---|---|
| ストレート溝加工 | 深さと幅を正確に制御する(ナットがスムーズに動くように) |
| Tスロット加工 | 工具の突き出し量と切削速度を適切に調整することが重要 |
Tスロットの用途|こんなところに使われている!
Tスロットは、機械や装置のさまざまな場所に使われています。以下に主な用途をまとめました。
機械テーブルへのワーク固定
フライス盤やマシニングセンタのテーブルには、Tスロットが等間隔で並んでいます。
Tナットとボルトを用いて、ワークやバイス、治具などを固定するのに使用されます。
治具ベースやクランプ装置の構造部
量産ラインの専用治具にTスロットを設けることで、位置変更や段取り替えが容易になります。リピート性が高く、作業性も向上。
アルミフレーム(Tスロットフレーム)
工場などでよく使われるアルミ製のT溝フレームにも、同様のTスロット構造があり、センサーやパネルなどの部品を任意の場所に簡単に取り付け可能です。
Tスロット加工に使用する工具と設備
必須工具一覧
| 工具名 | 目的 |
|---|---|
| エンドミル | 上部ストレート溝の加工 |
| Tスロットカッター | T形状の下部溝の加工 |
| 面取りカッター | バリ取りや角仕上げ |
| クーラント噴射装置 | 工具の熱対策・寿命延長 |
おすすめ加工機
- 立型マシニングセンタ(精度と再現性に優れる)
- CNCフライス盤(試作や小ロットに向く)
よくあるトラブルとその対策
| トラブル | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| ナットが引っかかる | 溝幅のばらつき、バリの残り | 溝加工後に面取り+エアブロー |
| 工具の破損 | 切削条件不適切、突き出し過多 | 加工深さを段階的に調整しながら加工 |
| 溝の精度が出ない | センタリングミス、工具のたわみ | 高剛性のホルダーを使用、切込みを小さくする |
JIS規格とTスロット寸法の関係
Tスロットには、JIS B 6012(フライス盤用作業台T溝寸法)などの規格が存在し、
ナットやボルトとの互換性を確保する上でも、規格に準拠した加工寸法を押さえることが非常に重要です。
| 呼び幅 | 上部溝幅 | 下部溝幅 | 適合Tナット |
|---|---|---|---|
| 12mm | 12 | 20 | M10 |
| 14mm | 14 | 24 | M12 |
| 18mm | 18 | 28 | M16 |
まとめ|Tスロット加工は固定技術の要!
Tスロット加工は、固定・再現性・拡張性を高めるための最も基本的でありながら応用範囲の広い加工方法です。
初心者の方でも、
- Tスロットの構造
- 加工ステップ
- 使用例
- 工具選び
をしっかり押さえれば、設計や加工現場で即戦力として活かすことができます。

