合金鋼の中でも、機械構造用として広く採用されているのが「SCM材(クロムモリブデン鋼)」です。特に SCM415・SCM420・SCM435 は、自動車部品や産業機械、精密機器の加工現場でよく使われるグレードです。しかし、同じSCMでも化学成分や強度、熱処理後の特性が異なるため、適切な材料選びを間違えると、加工不良や強度不足につながることがあります。
今日は 3つのSCM材の違いをわかりやすく比較し、機械加工で失敗しないための材料選定ポイント を詳しく解説します。
SCM材とは?まず押さえておきたい基本知識
SCM(クロムモリブデン鋼)は、クロム(Cr)とモリブデン(Mo)を添加した合金鋼で、
・高い強度
・焼入れ性の良さ
・耐摩耗性
・疲労強度の向上
が特徴です。
特に、自動車のギア・シャフト類など、強度と靭性が求められる部品に多く使われています。
SCM415・420・435の違いは主に 炭素量(C%) によって生まれ、これが材料強度や熱処理後の硬さ、加工性に関わってきます。
SCM415・SCM420・SCM435の化学成分の違い
以下は代表的な化学成分範囲の比較です。
| 材料 | 炭素C (%) | クロムCr (%) | モリブデンMo (%) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| SCM415 | 約0.13〜0.18 | 0.9〜1.2 | 0.15〜0.25 | 低炭素・浸炭向きで靭性が高い |
| SCM420 | 約0.18〜0.23 | 0.9〜1.2 | 0.15〜0.25 | 浸炭、焼入れにバランスよく対応 |
| SCM435 | 約0.33〜0.38 | 0.9〜1.2 | 0.15〜0.30 | 中炭素。強度・硬度が高く構造用に最適 |
炭素量が増えるほど、
→ 強度は高くなる
→ 反面、靭性は減少する
→ 被削性はやや悪くなる
といった特徴があります。
用途の違い|どのSCMをどの部品に使うべき?
SCM415:浸炭が必要な部品に最適
- 浸炭後の硬化層が得られやすい
- 芯部は柔らかく靭性が高い
- 衝撃を受ける部品に向く
よく使われる部品例
- 歯車(軽負荷)
- ピン類
- 小径シャフト
- スプロケット
SCM420:バランス型で用途が広い
- 浸炭にも焼入れにも対応できる
- 中程度の強度が必要な部品に便利
-加工性・熱処理のバランスがよい
よく使われる部品例
- ギア全般
- カムシャフト
- 油圧部品
- 一般機械部品
SCM435:高強度が必要な構造部品向け
- 焼入れ性が高い
- 高い引張強さと疲労強度が得られる
- ねじ・ボルトなどで広く使用
よく使われる部品例
- ボルト・スタッドボルト
- 高強度シャフト
- 構造部材
- 高荷重用のギア
機械加工での違い|加工性・変形・熱処理後の注意点
SCM415
- 低炭素なので加工が比較的しやすい
- 浸炭後は硬い層ができるため、仕上げ加工は注意
- 熱処理後の変形は比較的少ない
SCM420
- SCM415より少し硬いが加工性は十分
- 浸炭・焼入れ後の変形に注意
- 精密加工では仕上げしろを多めに確保すると無難
SCM435
- 中炭素のため加工難度はやや高い
- 焼入れ後は硬度が高くなるため研削が必要
- 熱処理歪みに注意し、工程管理が重要
- 切削時は刃物摩耗が大きいのでコーティング工具が有効
材料選びのポイント|失敗しないための判断基準
必要強度を明確にする
- 高強度 → SCM435
- 中強度 → SCM420
- 低強度・靭性重視 → SCM415
熱処理の有無を考える
- 浸炭が必要 → SCM415 or SCM420
- 焼入れ焼戻しで仕上げたい → SCM420 or SCM435
加工性を重視する場合
- 加工性が良い → SCM415
- トータルバランス → SCM420
- 精密加工で硬度が必要 → SCM435
コストと品質のバランス
SCM435は強度が高い分加工費が上がる場合もあるため、
必要以上のスペックは逆にコスト増になることがあります。
まとめ|用途・特性を理解して最適なSCM材を選ぼう
SCM415・SCM420・SCM435は、炭素量の違いが性能に大きく影響します。
どの材料を選ぶかは、
- 必要な強度
- 加工性
- 熱処理方法
- 使用環境
などを総合的に判断することが重要です。
適切な材料選定が、加工精度・コスト・品質を大きく左右します。
加工メーカーや材料商社と相談しながら、用途に合った最適なSCM材を選べば、トラブルのない安定した製品づくりにつながります。

