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歪みを取って品質アップ!レベラー加工の仕組みと用途とは?

金属材料の基礎知識

製造業の現場でよく聞かれる「レベラー加工」という言葉。これは主に鋼板や非鉄金属の板材を平坦にするための矯正加工で、素材の形状不良を取り除き、次工程での加工精度を大きく向上させる役割を果たします。

一見地味に思えるこの工程ですが、実は製品全体の品質・歩留まり・コストに深く関わる重要な前処理です。今日は、レベラー加工の原理・種類・用途・導入時のポイント・最新動向まで、実務レベルで知っておきたい情報を網羅的に解説します。

そもそもレベラー加工とは?

レベラー加工とは、板材の平坦度(フラットネス)を高めるために、板の歪みや反り、波打ち(ウェーブ)などを除去する加工です。

鋼板・アルミ板・銅板などの金属は、圧延やスリッター加工、コイル材からのカットなどの工程で残留応力や塑性変形が発生し、反りや歪みが生じます。このままでは、プレス加工や曲げ加工、溶接などの精度が出ず、工程不良や歩留まり低下、外観不良の原因となるのです。

レベラー加工はこれらの歪みを制御し、板材を「設計通りに使える状態」へ整える役割を担っています。

レベラー加工の原理:塑性変形と応力除去

レベラー加工では、板材に意図的な繰り返しの微小塑性変形を加え、内部の残留応力を分散・均等化させて平坦にします。代表的な原理は以下の通りです。

微小曲げによる塑性変形の蓄積

複数の上下ロールに通すことで、板材に周期的な曲げ・戻しが繰り返され、素材内部の局所的な塑性変形が蓄積されます。

応力の相殺

この微小な塑性変形により、板材内部の残留応力が打ち消し合い、結果的に反りや歪みが取れるというメカニズムです。

⚠ 表面的な反りを取るだけでなく、「内部応力の解放」こそがレベラーの真価です。

レベラー加工の方式と装置の種類

レベラー加工機には、対象材や処理量に応じていくつかの方式があります。

ロールレベラー(ロータリーレベラー)

上下交互に配置された多数のロールの間に板材を通し、連続的な小さな曲げ加工を行うことで平坦化します。

  • 対応板厚:0.1mm〜6mm程度(薄板〜中厚板)
  • ロール数:9〜21本程度が一般的
  • ロール材質:高硬度クロムメッキ鋼、工具鋼など
  • 特徴:幅広い材質に対応、調整幅が大きく、設備コンパクト

テンションレベラー(引張レベラー)

板材を一定の引張応力(テンション)をかけながら送り出すことで、板材を強制的に引き伸ばして平坦化する方式です。

  • 対応板厚:0.1〜2mm程度(主に薄板)
  • 用途:コイル材、長尺材などに適する
  • 特徴:高速ラインとの相性がよく、加工速度が速い

ストレッチレベラー(張出し式)

板材の両端をクランプで把持し、一定以上の荷重で物理的に引き延ばして矯正します。大型鋼板に多く用いられます。

  • 対応板厚:中厚板〜厚板
  • 用途:造船、建設機械、重機フレームなど
  • 特徴:強力な応力除去が可能、ただし大型設備が必要

レベラー加工がもたらす5つのメリット

効果内容
① 寸法精度向上歪みのない材料を使うことで後工程のズレやバラツキが減少
② 外観品質の改善波打ちや反りのない見た目で顧客満足度が向上
③ 加工トラブルの防止曲げ・穴あけ・溶接などでの不具合リスクを低減
④ 自動化対応力の強化平坦な材料はロボット搬送やピッキング時の安定性が高い
⑤ 歩留まり改善・再加工削減再加工の手間や廃棄材が減り、生産性・コストパフォーマンス向上

レベラー加工の用途例

レベラー加工は、以下のような製品や部品で非常に重要な工程として組み込まれています:

  • 自動車部品:インナーパネル、ルーフ材、ドアパネル
  • 家電・OA機器:筐体、フレーム、バックパネル
  • 建材:外装パネル、屋根材、建築鉄骨用鋼板
  • 精密板金部品:レーザー・タレパン後の歪み取り
  • プレス加工用素材:歪みを除去したうえで曲げ・抜き・成形加工へ

レベラー加工の注意点と品質管理

レベラー加工では以下の点に留意しなければ、逆に不具合の原因にもなり得ます。

  • 過度な変形による板厚減少
     → ロール圧やロール間隔の調整が重要
  • 加工ムラ(中心と端部での残り歪み差)
     → ロール数の最適化と送り速度制御が必要
  • 表面キズ・打痕のリスク
     → 材料に保護フィルムを貼る、ロール材質の定期点検を実施

また、ロールのメンテナンスや清掃も重要で、汚れが加工ムラや微細キズを引き起こす要因になります。

最新動向:高機能レベラーの進化とスマート化

最近では、NC制御によるロール圧自動調整機構やライン組み込み型レベラー(コイル開梱→レベラー→シャー切断)など、工程全体を通してのスマートファクトリー化も進んでいます。

また、薄板×高張力鋼板(ハイテン)など歪みやすい材料の普及に伴い、「材料特性に応じてリアルタイムで調整可能なインテリジェントレベラー」も登場しつつあります。

まとめ|レベラー加工は“高品質製品”の第一歩

レベラー加工は単なる平ら出し工程ではありません。製品の寸法精度・外観・加工性・自動化対応力など、あらゆる面での品質に直結する非常に重要な工程です。

板材の変形や反り、加工トラブルでお悩みの方は、レベラー加工の活用・見直しを検討してみる価値があります。
社内導入・外注選定にあたっては、材質・板厚・ロット数などに応じた最適な方式と信頼できる設備・業者を選ぶことが成功のカギです。

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