
エンドミルは、フライス加工で使用される代表的な切削工具の一つです。その形状や種類によって、さまざまな加工が可能になります。本コラムでは、エンドミルの基礎から応用までを詳しく解説します。
1. エンドミルの基礎
(1) エンドミルの基本構造
エンドミルは主に以下の部分で構成されています。
- シャンク
工具を保持する部分。円筒形が一般的で、工具保持の剛性に影響を与える。 - 刃部
切削を行う部分。刃数や形状によって、加工精度や仕上げ品質が変わる。 - ねじれ角(ヘリックス角)
刃の角度で、切削性能に影響を与える。大きいほど切削抵抗が減り、小さいほど剛性が高まる。 - コーティング
耐摩耗性や耐熱性を向上させるために表面処理されることが多い。
(2) エンドミルの種類
エンドミルにはさまざまな種類があります。
- スクエアエンドミル
一般的なフラットな刃先を持つタイプ。溝加工や端面加工に適している。 - ボールエンドミル
先端が球状で、3D加工や曲面加工に適している。金型加工などで活用される。 - ラフィングエンドミル
粗削り用で、波刃がついており切削抵抗を抑えた設計。高能率な切削が可能。 - コーナーラジアスエンドミル
角部にRを持ち、応力集中を軽減する。工具寿命の延長に貢献。 - テーパエンドミル
先端が細くなっており、深穴加工や細かい彫刻加工に使用される。 - 多刃エンドミル
刃数が多く、仕上げ加工に適している。
2. エンドミルの応用
(1) 適切なエンドミルの選定
エンドミルを選ぶ際には、以下の点を考慮することが重要です。
- 被削材(アルミ、鋼、ステンレスなど)に適した工具材質(超硬、HSSなど)を選ぶ。
- 加工形状(平面、曲面、溝加工など)に適したエンドミルの種類を選定。
- 回転数や送り速度を適切に設定し、工具の摩耗を防ぐ。
- クーラントの選定:水溶性・油性のどちらが適しているかを確認し、熱変形を抑制する。
(2) エンドミルの切削条件
エンドミルを使用する際には、適切な切削条件の設定が重要です。
- 切削速度(Vc)
刃先が被削材に対して動く速度で、素材や工具材質によって最適値が異なる。
公式::切削速度(m/min) :エンドミル直径(mm) :回転数(rpm) - 送り量(fz)
1刃あたりの移動量。適切な値を設定することで切削面の仕上げ精度を向上。 - 切込み量(ap, ae)
- ap(軸方向切込み量):1回の切削で刃が削る深さ。
- ae(径方向切込み量):刃が削る幅。
- 回転数(n):工具の回転数。
料 | 工具材質 | 切削速度 (m/min) | 送り量 (mm/刃) | 回転数 (rpm) |
---|---|---|---|---|
アルミ | 超硬 | 150 – 300 | 0.05 – 0.2 | 8000 – 20000 |
鋼 (一般) | 超硬 | 80 – 150 | 0.03 – 0.15 | 3000 – 10000 |
ステンレス | 超硬 | 60 – 120 | 0.02 – 0.1 | 2000 – 8000 |
チタン合金 | 超硬 | 30 – 80 | 0.01 – 0.08 | 1000 – 5000 |
鋳鉄 | 超硬 | 100 – 200 | 0.04 – 0.15 | 4000 – 12000 |
(3) エンドミルの使用上の注意点
- 切削条件を適切に設定し、工具寿命を延ばす:無理な送りや過剰な切込みを避ける。
- クーラントの使用を適切に管理し、熱影響を防ぐ:高温になりすぎると工具の摩耗が早まる。
- チップの排出を考慮し、目詰まりを防ぐ:切りくず排出が悪いと工具破損の原因になる。
- 正しい工具保持方法を選択:コレットチャックやホルダーの精度を確認し、振れを抑える。
3. 最新のエンドミル技術
近年では、高性能コーティングや特殊形状を持つエンドミルが登場し、より高効率な加工が可能になっています。たとえば、
- DLCコーティングエンドミル
アルミ加工において高い耐摩耗性を発揮。 - 多刃エンドミル
刃数を増やすことで切削抵抗を分散し、高能率な仕上げ加工が可能。 - ハイブリッドエンドミル
粗削りと仕上げを一つの工具で行うことができる。 - ナノコーティングエンドミル
超微細加工に適した高耐久性の工具。
まとめ
エンドミルは用途に応じて適切な種類を選定し、正しい使い方をすることで、高精度で効率的な加工が可能になります。最新の技術を活用しながら、最適なエンドミルを選択することが、加工の品質向上につながります。
今後もエンドミルの選定や加工技術について深掘りしていきますので、ご期待ください!
