
リーマとはドリルなどで加工された穴の内面を正しい形状、寸法で良好な仕上げ加工を行うための切削加工工具です。
リーマにはソリッドタイプ、ロウ付タイプ、組み立て式タイプがあります。
また、手回しで加工するハンドリーマと、マシニングセンタなどの工作機に取り付ける機械作業用リーマに分かれています。
リーマの加工精度
穴の直径に対し±0.01mmの寸法精度が要求されます。
ドリル加工で得られる精度はφ1mmで-5~+0μm程度なので、とても精度が高いことが割ります。
リーマでは濃度の高い切削油を使わないと仕上げ面が悪化することがあります。
工具のメンテナンスはもちろんですが、取付精度や切削油にも目を配る必要がありますので最新の注意を払って加工します。
寸法精度
リーマ加工の寸法公差は通常、H7~H11程度に設定されます。ただし、高精度を必要とする場合には、より厳しい公差(例:H6やH5)も達成可能です。
- 通常の寸法公差:±0.01~0.025mm
- 高精度な加工:±0.005mm以下
表面粗さ
リーマによる仕上げ加工では、表面粗さも優れた結果を得られます。
- 一般的な表面粗さ:Ra 0.8~1.6μm
- 高精度加工:Ra 0.2~0.4μm
円筒度・真円度
リーマは穴の真円度や円筒度を改善するのに非常に効果的です。円筒度や真円度は、通常0.01mm以下に抑えることが可能です。
適用範囲
リーマ加工は以下のような状況で使用されます:
- 穴径が既にドリルで加工されており、仕上げが必要な場合
- 高精度の嵌合(はめあい)が必要な部品(例:シャフトとベアリング)
- 高い寸法精度や表面仕上げが要求される航空宇宙部品や医療機器
影響要因
加工精度に影響を与える要因として、以下が挙げられます:
- リーマの材質と設計:超硬材やコーティングされたリーマは高精度加工に適しています。
- 切削条件:切削速度、送り量、潤滑剤の選択が精度に影響します。
- 被削材の性質:アルミニウムや鋼、チタンなど被削材によって異なる適切なリーマを選択する必要があります。
リーマ加工を成功させるには、工具と加工条件を適切に選ぶことが重要です。また、事前のドリル加工やリーマの取り付け精度も全体の仕上がりに大きく影響を与えます。
リーマの加工条件
切削加工条件については別の記事にも書いてありますので参考にしてください。
加工条件が合っていないと、穴が大きくなったり、仕上げ面が悪くなったりしますので、テスト加工などして最適な加工条件を見つけてください。
リーマの下穴サイズ
リーマの下穴の最適な径サイズは、素材や径の大小によって一概にいえませんが、工具メーカーの出す推奨条件などを参考にすると良いですが、基本的な考え方としてリーマ代が0.05〜0.20になるようにドリルのサイズを選定してください。またリーマの種類によっても異なりますので注意しましょう。
被削材 | リーマ刃径 | ||||
---|---|---|---|---|---|
~φ6 | ~φ10 | ~φ16 | ~φ25 | φ25~ | |
鋼 ~700N/mm2 700N/mm2以上 | 0.1~0.2 0.1~0.2 | 0.15~0.2 0.15~0.2 | 0.2~0.3 0.2~0.25 | 0.3~0.4 0.25~0.3 | 0.4~0.5 0.3~0.4 |
鋳鋼 鋳鉄 可鍛鋳鉄 | 0.1~0.2 0.1~0.2 0.1~0.2 | 0.15~0.2 0.15~0.2 0.15~0.2 | 0.2~0.25 0.2~0.3 0.2~0.3 | 0.2~0.3 0.3~0.4 0.3~0.4 | 0.3~0.4 0.4~0.5 0.4~0.5 |
リーマ穴の検査

リーマ穴は図面に記載されている精度に対して限界栓ゲージや3次元測定器などを用いて検査します。
限界栓ゲージは穴径の通り側と止り側を正確に測定できますので、リーマ加工する場合は必ず必要になります。
但し、お客様によってキツめでという指定がある場合がありますので注意が必要です。
検査項目
寸法精度
- 穴径が設計図面に示された寸法公差内に収まっているかを確認します。
- 測定工具:
- プラグゲージ(限界ゲージ):合否判定が迅速に行える。
- 内径マイクロメータ:高精度な寸法測定に使用。
- ホールテスト(三点式内径測定器):精密な内径測定に適する。
真円度
- 穴の断面が完全な円形に近いかを測定します。
- 測定工具:
- 真円度測定器:真円度専用の高精度な機械。
- ダイヤルゲージ:手動で簡易的な確認が可能。
円筒度
- 穴の全長にわたって、円筒形状が保たれているかを確認します。
- 測定工具:
- 真円度測定器(円筒度測定にも対応するモデル)。
- CNC三次元測定機:穴の立体的な形状を詳細に測定可能。
表面粗さ
- リーマ加工後の穴の内面の仕上がりを評価します。
- 測定工具:
- 表面粗さ計:Ra(算術平均粗さ)やRz(十点平均粗さ)を測定可能。
軸線の直線度
- 穴の軸線が直線であるかどうかを確認します。
- 測定工具:
- 直線度測定器または三次元測定機。
測定方法
- 準備
- 測定工具のキャリブレーションを行い、適切な精度が確保されていることを確認します。
- 検査環境の温度や振動を安定させます。
- 寸法の確認
- プラグゲージまたは内径マイクロメータ栓ゲージで穴径を測定します。
- 必要に応じて複数箇所(穴の上部・中央・下部)を測定します。
- 形状の測定
- 真円度や円筒度を測定器で確認します。
- 長さ方向に沿った複数の断面で測定を行い、形状の一貫性を評価します。
- 表面粗さの測定
- 表面粗さ計を用い、穴内面の仕上がりを測定します。
- Ra値が図面の仕様に適合しているかを確認します。
- 結果の記録
- 測定値を記録し、仕様に適合しているかを評価します。
- 必要に応じて検査報告書を作成します。
リーマのトラブル
リーマ加工では、加工条件や工具の使用状況によってトラブルが発生することがあります。以下はリーマ加工でよく見られるトラブル例とその原因、対策をまとめたものです。
穴径が公差外になる
原因
- リーマの摩耗や破損
- 切削条件が不適切(切削速度や送り量が不適切)
- 被削材に硬化層がある
- リーマの芯出しが正しく行われていない
対策
- 使用前にリーマを点検し、摩耗や損傷があれば交換する。
- 推奨される切削条件を確認し、適切に設定する。
- 被削材に硬化層がある場合、事前に取り除く加工を行う。
- リーマの取り付け精度を確認し、芯出しを正確に行う。
真円度・円筒度が悪い
原因
- ドリル加工の段階で穴が真円でない
- リーマが偏芯している
- リーマの刃先が摩耗している
対策
- ドリル加工時の穴の精度を向上させる。
- リーマの芯出しを慎重に行う。
- 定期的にリーマを交換し、摩耗した工具を使用しない。
表面粗さが悪い
原因
- リーマの刃先が摩耗している
- 切削油(潤滑剤)の供給が不十分
- 切削条件が適切でない(切削速度が高すぎる)
対策
- 刃先の摩耗がある場合はリーマを交換する。
- 十分な量の切削油を供給し、潤滑性を向上させる。
- 適切な切削速度と送り量を選択する。
バリが発生する
原因
- リーマの刃先が鈍化している
- リーマの送り速度が不適切
- 被削材の材質がバリを生じやすい
対策
- 鋭利なリーマを使用し、刃先の状態を定期的に確認する。
- 適切な送り速度を設定する。
- バリを抑えるための工具や加工手順(バリ取り加工を含む)を導入する。
リーマの破損
原因
- 切削抵抗が大きい(切削速度や送り量が高すぎる)
- 被削材に異常硬化部がある
- 切りくずが排出されず詰まっている
対策
- 適切な切削条件を設定する。
- 被削材の硬化層を事前に取り除く。
- 切りくずがスムーズに排出されるよう、リーマの設計や潤滑条件を最適化する。
穴の位置ズレ
原因
- ドリル加工時に芯出しがずれている
- リーマの取り付けが不適切
- 工作機械の剛性不足
対策
- ドリル加工時の位置精度を向上させる。
- リーマの取り付け状態を確認し、適切に固定する。
- 工作機械の剛性やチャッキングの状態を改善する。
切りくずの詰まり
原因
- リーマの溝形状が不適切
- 切削油の供給が不足している
- 被削材が切りくずを排出しにくい性質を持つ
対策
- 切りくず排出性の高い溝形状のリーマを選定する。
- 切削油の供給量を増やし、切りくずの排出を助ける。
- 必要に応じてリーマのピッチや工具の種類を変更する。
異音や振動が発生する
原因
- リーマが摩耗している
- 切削条件が不適切
- 工作物の固定が不十分
対策
- 摩耗したリーマを交換する。
- 切削速度や送り量を見直す。
- 工作物をしっかり固定し、振動を抑える。
リーマ加工のトラブルを防ぐには、工具の定期点検や切削条件の最適化、加工工程全体の管理が重要です。また、トラブルが発生した場合は原因を特定し、適切な対策を講じることで、加工品質の向上と安定性の確保が可能になります。
まとめ
リーマ穴は高い精度を求められているため、ドリル加工やエンドミル加工よりも注意を払う必要があります。ATCを使わないというのも一つの手法です。
精度が悪かったために今までの加工が全て台無し・・ってことにならないようにしましょう。
