はじめに|「金属の重さを知りたい」と思ったら
金属加工や設計、資材調達、輸送コストの見積もりなど、多くのシーンで「この金属、何キロ?」という問いは日常的に発生します。
しかし、「金属の重さ=直感」で判断していませんか?
実際は、比重と体積という2つの情報があれば、かなり正確な重量計算が可能です。
今日は、以下のポイントを網羅的に解説します。
- 比重・密度の基礎知識
- 金属重量の計算式
- 図形ごとの体積算出法
- 各種金属の比重一覧(g/cm³・kg/m³両方掲載)
- 重量計算でよくあるミスとその対策
- Excelや実務に役立つ応用知識
「比重」と「密度」はどう違う?|まずは基本を確認
● 密度(Density)とは?
密度とは、物質1cm³あたりの質量(g)のことです。
たとえば、鉄の密度は約7.87g/cm³ということは、1cm³の鉄の塊が7.87gあるという意味です。
● 比重(Specific Gravity)とは?
比重は、水を基準とした相対的な重さで、単位がありません。
しかし、金属においては「比重 = 密度(g/cm³)」としてほぼ同義で扱って差し支えありません。
✅ 注意:SI単位系では「密度(kg/m³)」が正式ですが、日本の現場では「比重=g/cm³」で使われている場合が多いです。
金属の重量を求める基本式
重量(kg)を求めるには、以下の基本式を使います。
重量(kg) = 体積(cm³) × 比重(g/cm³) ÷ 1000
または、
重量(kg)=体積(m³) × 密度(kg/m³)
単位さえ統一していれば、どちらでも問題ありません。
金属の比重一覧【g/cm³・kg/m³の両対応】
金属名 | 比重(g/cm³) | 密度(kg/m³) | 備考 |
---|---|---|---|
アルミニウム | 2.70 | 2700 | 軽量・耐食性が高い |
鉄(軟鋼) | 7.87 | 7870 | 汎用的な構造材 |
ステンレスSUS304 | 7.93 | 7930 | 錆びにくいが重め |
銅 | 8.96 | 8960 | 導電性が高く加工性良好 |
真鍮(黄銅) | 8.50 | 8500 | 加工性良好・装飾にも使われる |
チタン | 4.51 | 4510 | 高強度・軽量・耐食性◎ |
鉛 | 11.34 | 11340 | 非常に重く遮蔽性に優れる |
亜鉛 | 7.14 | 7140 | ダイカストに多用される |
マグネシウム | 1.74 | 1740 | 金属中で最も軽い部類 |
形状別の体積計算式まとめ【図解付き】
形状 | 体積の計算式(mm単位) | 備考 |
---|---|---|
直方体 | 幅 × 高さ × 長さ | 板材やブロック |
円柱 | π × (直径 ÷ 2)² × 長さ | 丸棒、パイプ、丸板など |
パイプ | π × (外径² − 内径²) ÷ 4 × 長さ | 中空部がある形状 |
六角棒 | (3√3 ÷ 2) × 一辺² × 長さ | 一辺が等しい六角柱形状 |
球体 | (4/3) × π × 半径³ | 滅多にないが参考まで |
✍️ π ≒ 3.1416(円周率)
【実例1】鉄製ブロックの重量を計算
サイズ:200mm × 100mm × 10mm(鉄)
①体積を算出
200 × 100 × 10 = 200,000mm³ = 200cm³
②比重(鉄)=7.87g/cm³
重量 = 200 × 7.87 ÷ 1000 = 1.574kg
【実例2】アルミ製丸棒(直径30mm × 長さ500mm)
①体積
半径=15mm →
体積 = π × 15² × 500 ≒ 3.1416 × 225 × 500 = 353,429mm³ = 約353.4cm³
②比重(アルミ)=2.7g/cm³
重量 ≒ 353.4 × 2.7 ÷ 1000 = 0.954kg
よくあるミスと注意点
ミス事例 | 対策 |
---|---|
mm³とcm³の変換ミス | 必ず単位変換(1cm³=1000mm³)を忘れずに |
比重と密度の混同 | 「g/cm³=比重」「kg/m³=密度」と覚える |
合金や処理材の密度を調べずに使用 | 必ず仕様書やメーカー公称値を参照 |
パイプの内径外径を間違えて体積計算 | 内径・外径の両方をしっかり確認 |
実務で使える便利なツール
- ✅ 重量計算Excelテンプレート(VLOOKUPで比重自動取得)
- ✅ 形状別重量早見表(mm単位/kg単位)
- ✅ CAD図面から自動で体積を取得する機能(ソリッドモデル対応)
これらを活用することで、設計・見積もり・加工指示の効率が格段にアップします。
まとめ|重量計算は「比重 × 体積」の掛け算だけ!
金属の重量を正しく計算するには、材料ごとの比重と正確な体積算出が重要です。
特に、輸送費・加工機の選定・荷重計算・耐久性検討など、現場レベルの判断に直結するため、“なんとなく”で済ませず、数値で把握することが大切です。