金属加工の一般公差とは

製造業において「公差」は、部品の品質・組立精度・コストを左右する極めて重要な要素です。
特に「一般公差(General Tolerance)」は、図面に個別の公差指示がない寸法に自動的に適用される基準であり、製造の効率化と品質の安定化に大きく貢献します。
今日は、一般公差の定義・JIS規格・等級の違い・設計や加工への活かし方まで、実務で役立つポイントを徹底的に解説します。
一般公差とは
一般公差とは、図面上に明示的な公差記号が指定されていない寸法に対して、自動的に適用される許容誤差のことです。
たとえば、図面に「長さ100」としか書かれていなくても、JISで定められた一般公差の基準に従って±何mmの誤差が許されるかが決まっています。
この仕組みにより、図面作成の手間を減らし、加工現場の判断を標準化できるのです。
一般公差の目的
- 設計と加工の共通ルールを作る
どの加工業者でも同じ基準で寸法精度を解釈できるため、外注や海外調達時にも品質のばらつきを抑制できます。 - 過剰精度の抑制によるコスト削減
すべての寸法に厳しい公差を設定すると、加工コストが急上昇します。一般公差を活用することで、必要十分な精度を保ちつつ無駄なコストを削減できます。 - 図面ミス・手戻り防止
公差記入漏れによるトラブルを防ぎ、設計変更時にも影響範囲を最小限にできます。
一般公差の規格(JIS)
日本では主に以下のJIS規格が適用されます。
| 規格番号 | 名称 | 対象 |
|---|---|---|
| JIS B 0405 | 一般公差-長さ寸法 | 長さ・幅・高さなどの線寸法 |
| JIS B 0408 | 一般公差-角度寸法 | 傾斜や角度に関する寸法 |
| JIS B 0419 | 幾何公差の一般公差 | 形状・位置・振れなどの幾何偏差 |
図面上に「一般公差はJIS B 0405-m級による」などと記載することで、個別寸法に指定がなくても自動的に適用されます。
一般公差の等級と意味
JISでは、製品の要求精度や用途に応じて以下の4つの等級が設定されています。
| 等級 | 公差の厳しさ | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| 精級(f) | 非常に厳しい | 精密金型、測定具、精密装置 |
| 中級(m) | 標準的 | 一般機械部品、量産部品 |
| 粗級(c) | 緩い | 溶接構造物、外観部品 |
| 特粗級(v) | 最も緩い | 大型構造物、建築部材 |
等級を誤って設定すると、コストが数倍に跳ね上がる場合もあります。
たとえば、精級(f)を指定すると加工精度が±0.1mm単位となり、工作機械の精度や測定手間が増えるため、コストも時間も増加します。
JIS B 0405 に基づく一般公差の具体例
下表は、JIS B 0405(長さ寸法)に基づく中級(m)の例です。
| 寸法範囲(mm) | 許容差(±mm) |
|---|---|
| 0 ~ 6 | 0.1 |
| 6 ~ 30 | 0.2 |
| 30 ~ 120 | 0.3 |
| 120 ~ 400 | 0.5 |
| 400 ~ 1000 | 0.8 |
つまり、「100 ±0.3mm」が自動的に適用されるということです。
この基準を理解していないと、設計者と加工者の間で寸法誤解が生じることもあります。
品質向上における一般公差の効果
- 寸法ばらつきの安定化
公差を適切に設定することで、ロットごとのばらつきを管理しやすくなります。 - 組立精度の向上
はめ合い部や位置関係の誤差が減少し、組立作業がスムーズになります。 - 不良率の低下
設計意図に合った許容範囲を設定することで、加工ミスや再検査の発生を防げます。 - 品質保証の標準化
JISに準拠した一般公差を用いれば、品質保証部門での検査基準も統一できます。
コスト削減に直結する公差設定のコツ
- 重要寸法と非重要寸法を分ける
組立や機能に影響する部分だけ個別公差を指定し、それ以外は一般公差に任せることで効率化できます。 - 加工方法の特性を考慮
旋削・フライス・研削・板金など、加工法によって得られる精度が異なります。
たとえば、旋盤加工では±0.05mmが容易でも、板金加工では±0.5mm程度が限界です。 - 寸法基準を明確に記載する
図面に「一般公差:JIS B 0405 m級」などを必ず明記し、業者間の誤解を防止します。 - 公差累積を意識する
複数部品が組み合わさる場合、各寸法の誤差が累積してズレが発生します。
設計段階で累積誤差を計算し、組立精度を確保する工夫が必要です。
よくあるトラブル事例
| トラブル内容 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 組立が入らない | 公差を厳しすぎに設定 | 機能寸法以外は中級または粗級に変更 |
| コストが高い | 精級指定の乱用 | 加工業者と相談し適正公差を再設定 |
| 寸法がばらつく | 図面に基準未記載 | 「一般公差 JIS B 0405-m」などを明記 |
| 海外加工で不良発生 | 海外ではISO基準が主流 | JISとISOの対応表を共有し認識統一 |
設計者と加工者が共有すべきポイント
- 設計者視点:機能を満たす最小限の精度を設定する。
- 加工者視点:現実的に加工できる範囲を理解して提案する。
- 共通視点:JIS公差表を基準に、設計意図と加工能力をすり合わせる。
この連携が取れていれば、コストを抑えながら高品質な製品づくりが実現できます。
まとめ
一般公差は、単なる「許容誤差の基準」ではなく、設計品質とコスト最適化を両立させる戦略的ツールです。
JIS規格を理解し、製品の重要度に応じて等級を使い分けることで、無駄のないものづくりが可能になります。
正しい公差設定は、
- 加工精度の安定化
- 不良品の削減
- 加工コストの削減
- サプライチェーン全体の品質向上
といったメリットをもたらします。
設計段階から一般公差を意識し、図面に明記することが、信頼される製造の第一歩です。



