アルミニウム加工の基礎

コラム

アルミニウムとは

アルミニウムは、化学元素の一つであり、周期表記号は「Al」です。原子番号は13であり、原子核には13個の陽子と、通常はもう13個の中性子が含まれています。アルミニウムは非常に広く利用されている軽量金属であり、地殻中の3番目に豊富に存在する元素です。その軽さ、耐腐食性、導電性、加工性などの特性から、多岐にわたる用途に利用されています。

アルミニウムは、航空機の製造、自動車の部品、建築材料、電子機器、飲料缶、包装材料などのさまざまな製品に広く使用されています。また、アルミニウム合金は、強度を向上させるために他の元素と組み合わせられることがあります。

アルミニウムは天然に存在する鉱石から抽出されますが、電気分解法によるボーキサイトの精錬が最も一般的な方法です。アルミニウムはリサイクル可能であり、廃棄物として処分されることなく再利用されることが多いため、環境にも優しい素材の一つとされています。

アルミニウムの特徴

アルミニウムの特徴には以下のようなものがあります。

  1. 軽量性: アルミニウムは非常に軽量な金属です。その密度は2.7 g/cm³であり、鉄の約1/3の軽さです。そのため、輸送や建築などで軽量で強靭な素材として広く使用されます。
  2. 耐腐食性: アルミニウムは酸素と反応して表面に酸化皮膜を形成するため、自己修復性があります。この酸化皮膜は、アルミニウムを外部の腐食から保護し、耐候性を高めます。
  3. 導電性: アルミニウムは良好な電気伝導性を持ちます。そのため、電気配線や導電部品などの用途に適しています。
  4. 加工性: アルミニウムは比較的柔らかい金属であり、加工しやすい特性があります。押出成形、鍛造、切削、溶接などの加工方法が一般的に使用されます。
  5. 反射性: アルミニウムは高い光反射率を持ちます。そのため、反射鏡や光学部品などの用途に利用されます。
  6. リサイクル可能性: アルミニウムは100%リサイクル可能な素材であり、再利用によって資源の有効活用が可能です。そのため、環境に優しい素材としても評価されています。

これらの特性から、アルミニウムは広範囲にわたる産業や製品で使用され、現代社会において重要な素材の一つとなっています。

アルミニウムを使う産業

アルミニウムはその軽量性や耐腐食性、加工性などの特性から、さまざまな産業で幅広く使用されています。

  1. 航空産業: 航空機の製造において、アルミニウムは主要な素材の一つです。航空機のフレーム、外板、内装部品などに使用され、軽量化と強度確保のために重要な役割を果たしています。
  2. 自動車産業: 自動車の軽量化が求められる中で、アルミニウムはエンジンブロック、車体パネル、サスペンション部品などに広く使用されています。軽量化により燃費の向上やパフォーマンスの向上が期待されます。
  3. 建築産業: 建築業界では、アルミニウムは窓枠、外装パネル、屋根材などの建材として広く使用されています。耐久性と軽量性が建物の構造において重視されるため、アルミニウムは人気の素材です。
  4. 電子産業: 電子機器やコンピュータの筐体、ケーブル、放熱材などにアルミニウムが使用されています。その導電性や加工性が、電子機器の製造に適しているためです。
  5. 食品産業: アルミニウム製の缶は飲料や食品の容器として広く使用されています。アルミニウムの軽量性と耐腐食性が、製品の保存や輸送に適しています。
  6. パッケージング産業: アルミニウム箔やアルミニウム製容器は、食品や医薬品の包装に使用されています。その防湿性や防味性が、製品の品質保持に役立ちます。

これらは代表的な産業であり、他にも船舶産業や鉄道車両、家具製造、スポーツ用具など、さまざまな分野でアルミニウムが使用されています。

アルミニウムの加工性

アルミニウムはその柔らかさや加工性の高さから、さまざまな方法で加工することができます。

  1. 切削: アルミニウムは比較的柔らかい金属であるため、切削加工によって容易に形状を作ることができます。旋盤やフライス盤などの工作機械を使用して、削り出しや穴あけなどの加工が行われます。
  2. 押出成形: アルミニウムの加熱されたバーを金型に送り込み、高圧で成形することで、複雑な形状のプロファイルや管などを作ることができます。建築材料や自動車部品などに広く使用されます。
  3. 鍛造: アルミニウムを加熱して柔らかくし、ハンマーやプレスなどで形状を打ち出す方法です。高い強度を持つ部品を製造するために使用されます。
  4. 溶接: アルミニウムは溶接に適した金属であり、TIG溶接やMIG溶接などの方法で加工することができます。溶接によってアルミニウム製品の組み立てや修理が行われます。
  5. 折り曲げ: アルミニウムは比較的柔らかいため、折り曲げや曲げ加工が容易です。プレスブレーキやローラーを使用して、シートやプレートを所定の形状に加工することができます。
  6. 加熱処理: アルミニウム合金は加熱処理によって強度や硬度を調整することができます。熱処理によって組織を変化させ、特定の物性を得ることが可能です。

これらの加工方法を組み合わせることで、さまざまな形状や仕上がりを持つアルミニウム製品が生産されます。

アルミニウムの種類

純アルミ系

1000番台表示のアルミは純アルミニウムを指しています。 純度99.00%以上のアルミニウムで、不純物は主に鉄、シリコンになります。
不純物が少なくなるにつれて耐食性が向上します。
純アルミ系は耐食性、加工性、溶接性、電気・熱伝導性にも優れていますが、強度が低く、切削加工しにくい材料とも言えます。

主な用途としては強度の必要ない日用品、装飾品、反射板、化学工業タンク類、熱交換器部品等です。

2000系合金

2000番台表示のアルミはジュラルミン、超ジュラルミンとも呼ばれ、2000系合金を代表する材質として知られ、鉄に匹敵する強度を持っています。
この合金では強度向上の為に銅が多く添加されており、耐食性を劣ります。
ニッケルを添加することにより高温での強度が増し、切削性も他の合金に比べ良好です。

主な用途としては、ねじ類、ギヤー部品、リベット類、航空宇宙機器、光学機械部品、船舶用材等になります。

3000系合金

3000番台表示合金はマンガンの添加により、純アルミニウムの加工性や耐食性をそのままに強度を向上させたものになります。マグネシウムを添加することにより、さらに強度を増加させることが出来ます。

主な用途としては、アルミ缶、化粧板、カラーアルミ、建築材等

4000系合金

4000番台表示合金はシリコンを添加することにより、熱による膨張を抑え、耐磨耗性の向上を狙ったものになります。銅、ニッケル、マグネシウム等の添加により耐熱性を向上させ、鍛造ピストン材として用いられています。

主な用途としては、ピストン、シリンダヘッド等になります。

5000系合金

5000番台表示合金マグネシウムを添加して強度と耐食性を向上させた合金になります。
特にA5083はマグネシウム含有量が多く、強度も優れている。
耐食性に強く、溶接性も良い為、船舶材料や車両、化学プラント等によく用いられています。
加工性も良くアルミニウム材料として主流になっている種類です。

主な用途としては船舶、アルミホイール、化学プラント、圧力容器等になります。

6000系合金

マグネシウムとシリコンが一定の含有比で添加されており、強度、耐食性共に良好で、押出し加工性に優れています。

主な用途としてはアルミサッシ、ガードレール、船舶、車軸、家具、家電製品等になります。

7000系合金

鉛とマグネシウムを添加し熱処理した最も高強度の合金になります。
7000系合金は最高強度を持つAl-Zn-Mg-Cu系合金と、銅を含まないAl-Zn-Mg系合金の2種類に分かれています。
7000系合金で代表的なものがA7075で、超々ジュラルミンとも呼ばれ、航空機、スポーツ用品等に使用されていいます。

主な用途としては、金属バット、航空機用材、車軸等になります。

まとめ

アルミニウムはその軽量性、耐腐食性、加工性、そしてリサイクル可能性などの特性から、無限の可能性を秘めた素材だとわかったと思います。その軽量性や耐久性から、持続可能な建築物の構築において今後も重要な役割を果たすと思いますし、航空機や自動車などの軽量化においては、燃費効率の向上やエネルギーの節約につながります。
アルミニウムが持つ可能性は非常に広範囲にわたります。持続可能な未来を築くために、アルミニウムの特性を活かしたさまざまな技術や製品の開発が今後も進められることが期待されます。

タイトルとURLをコピーしました