プレス金型とは、金属板を特定の形状に成形するための工具であり、プレス機を使用して金属加工を行う際に不可欠な要素です。金型は、金属板を挟んで圧力を加えることで、打ち抜き、曲げ、絞り、成形などの加工を行います。今回はプレス金型の概要、構造、種類、そしてその応用について詳しく説明します。
プレス金型の概要
プレス加工の基本工程
プレス金型を用いた加工は、大きく以下の工程に分けられます。
- せん断加工(打ち抜き・切断)
板材を打ち抜くことで、特定の形状を作り出す。 - 曲げ加工
板材を折り曲げて立体形状を形成。 - 絞り加工
平板を立体的な容器状に成形。 - 成形加工
曲げや絞りを組み合わせて、複雑な形状を作る。
プレス金型は、金属加工において以下の主要な機能を果たします。
- 形状形成
金属板を所望の形状に切断、曲げ、絞る。 - 精密加工
高精度の寸法と形状を提供。 - 大量生産
高速で効率的に大量の部品を製造。
プレス金型の材料
プレス金型の材料には、高い耐久性・耐摩耗性・靭性が求められます。使用する金型の種類や加工方法によって、適した材料が選ばれます。
プレス金型に求められる特性
- 高硬度
摩耗に強く、長寿命化を実現 - 耐摩耗性
繰り返し使用しても摩耗しにくい - 靭性(じんせい)
衝撃や負荷に耐えられる強度 - 加工性
切削や研削加工が容易で、仕上げがしやすい
主なプレス金型材料と用途
材料 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
SKD11(冷間ダイス鋼) | 高硬度・耐摩耗性に優れる | 打ち抜き・曲げ加工用金型 |
SKH51(高速度鋼) | 高温時の硬度維持が可能 | 高精度な順送金型・パンチ部品 |
DC53(改良型冷間ダイス鋼) | 靭性が高く割れにくい | 大型金型・高耐久金型 |
SKS3(特殊工具鋼) | 靭性と耐摩耗性のバランスが良い | 曲げ加工用金型 |
超硬合金(WC-Co) | 非常に高い硬度と耐摩耗性 | 長寿命が求められるパンチ・ダイ |
S50C・S55C(炭素鋼) | 加工性が良くコストが安い | 金型ベース・支持部品 |
プレス金型の部品ごとの適用材料
- パンチ・ダイ(せん断加工部品) → SKD11, DC53, 超硬合金
- ガイドポスト・ブッシュ(摺動部) → SUJ2(高炭素クロム軸受鋼)
- ベースプレート(基礎部分) → S50C, S55C
材料選定のポイント
✅ 加工する材料の硬さに応じた選定(高硬度材料には耐摩耗性の高い鋼材を使用)
✅ 金型の寿命とコストのバランスを考慮(高硬度ほど寿命は長いが加工コストも増加)
✅ 成形方法や製品精度に適した材料を選択(順送金型には耐摩耗性の高い材料が必要)
プレス金型の材料選びは、製造コストや品質に直結する重要な要素です。適切な材料を選定することで、金型の寿命を延ばし、生産効率を向上させることが可能になります。
プレス金型の構造
プレス金型は主に以下の部品で構成されています。
- ダイ: 金属板を受ける下部の型。
- パンチ: 金属板を押し付けて成形する上部の型。
- ガイドポストとブッシュ: ダイとパンチの正確な位置合わせを保つための部品。
- ストリッパープレート: 加工後の金属板をパンチから取り外すための部品。
- ブランクホルダー: 金属板を固定して動かないようにする部品。
プレス金型の種類
- 単発型
一度のプレス動作で単一の加工を行う金型。単純な形状の部品を製造するのに使用。 - 順送型
連続的なプレス動作で複数の工程を順次行う金型。金属板が連続的に移動し、各ステーションで異なる加工が行われる。大量生産に適している。 - 複合型
一度のプレス動作で複数の加工工程(例えば、打ち抜きと曲げ)を同時に行う金型。効率的な部品製造に適している。 - トランスファー型
部品がトランスファーメカニズムによってステーション間を移動しながら加工が進む金型。複雑な形状の部品や大きな部品の製造に適している。
プレス金型の応用
プレス金型は様々な産業で広く使用されています。
- 自動車産業: 車体部品、エンジン部品、シャーシ部品などの製造。
- 家電製品: 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジの外装部品など。
- 建設業: 建物の構造材や橋梁部材。
- 医療機器: 精密部品や医療器具の製造。
- 電子機器: 精密な金属部品やケースの製造。
プレス金型のメリット
- 高精度: 高精度の部品を大量に製造できる。
- 効率的な大量生産: 高速で大量の部品を効率的に生産できる。
- コスト削減: 大量生産により、一部品あたりのコストを削減できる。
- 多様な形状: 複雑な形状や細かいディテールを持つ部品を製造できる。
まとめ
プレス金型は、金属板を加工して多様な形状の部品を製造するための重要な工具です。金型の種類や構造を理解し、適切なものを選定することで、製造効率を向上させ、高品質な製品を生産することが可能となります。これらの技術は、自動車、家電、建設、医療、電子機器などの産業で不可欠な役割を果たしています。
