チタンとは

チタンは「軽くて強い」「高耐食性」「高生体適合性」など、他の金属にはない優れた特性を持つ材料です。航空宇宙、医療機器、化学プラント、スポーツ用品まで幅広い産業で利用されています。しかし、その優れた特性ゆえに加工が難しく、精度を保ちながら安定した生産を行うためには独自のノウハウが必要です。
今日は、これからチタン加工に取り組む方や、外注先を選定する担当者に向けて、チタンの基礎特性から加工時の注意点までわかりやすく解説します。
チタンの特性と用途の幅広さから、多くの産業で重要な素材として利用されています。
チタンの基礎特性
軽量で高強度
チタンの比重は約4.5。鉄(7.9)や銅(8.9)に比べて圧倒的に軽く、比強度(強度 ÷ 重さ)は金属トップクラスです。
→ 航空機部品や自転車フレームなど、軽さと強度が求められる用途に最適。
優れた耐食性
海水・薬品・酸にも非常に強く、ステンレス鋼よりも耐食性が高い場合があります。
→ 化学プラント、海洋機器など過酷環境で利用される理由。
生体適合性が高い
体内で腐食しにくく、拒絶反応が起きにくい特徴があります。
→ 医療用インプラント(人工関節・スクリューなど)の材料として広く使用。
熱伝導率が低い
チタンは熱が刃物に集中しやすいため、工具摩耗の原因になりやすい点が加工の難易度を高めています。
チタンが「加工しにくい」理由
チタン加工は一般的に“難削材”と呼ばれます。その理由を分解して理解しておきましょう。
切削熱が工具に集中する
熱伝導率が低いため、
- 切削熱が排出されない
- 工具先端だけが過熱
- 工具の早期摩耗につながる
という悪循環が起こりがちです。
弾性変形しやすい
チタンは弾性が高く、
- 切削抵抗でしなりやすい
- ビビり(チャタリング)が発生しやすい
- 寸法精度が安定しにくい
といった課題を引き起こします。
反応性が高い
高温になると工具材料と反応しやすく、
溶着や欠けが発生しやすい という性質があります。
チタン加工のポイント
特性を理解した上で、加工の成功率を高めるための重要ポイントをまとめます。
切削工具の選定
コーティングはTiAlN系が基本
耐熱性が高く、溶着を防ぎやすい。
最近では、チタン専用の多層コーティング工具も普及。
工具材質は超硬がベース
剛性が高く、摩耗しにくいため、
超硬 × TiAlNコーティング
がチタン加工の鉄板構成。
切削条件は「低速・高送り」が基本
チタン加工は高速回転に弱いため、
過度な回転数は工具寿命を大きく縮めます。
一般的な指針:
- 回転数:低め(例:200〜400 m/min程度の表面速度)
- 送り:やや高め
- 切り込み:浅め
熱を発生させないために、切削負荷を一定に保つことがもっとも重要です。
クーラントの管理
チタンは熱がこもりやすいため、
クーラントの量・圧力・当てる位置が加工品質を左右します。
とくに:
- 高圧クーラント
- 切削点にダイレクトに噴射
- 乳化液よりも高性能切削油
が効果的。
ビビり対策(チャタリング対策)
チタンの弾性による振動を抑えるための工夫が必須です。
- ボールエンドより高剛性なスクエアエンドを使う
- ホルダー突き出し量を最小にする
- 切削条件をこまめに調整する
- 切削方向を一定にする(アップカットよりダウンカット)
振動は工具寿命だけでなく、寸法精度にも影響します。
仕上げ加工はゆっくり丁寧に
チタンは仕上げ面が荒れやすい傾向があります。
- 切り込み量を最小にする
- 切削油を適切に当てる
- 工具をこまめに交換して刃先を維持する
など、精密加工では特に注意が必要です。
チタン加工でよく使われるグレード
チタンには多くの種類がありますが、とくに利用頻度が高いのは以下の2種類です。
Ti-6Al-4V(64チタン / Grade5)
- 航空宇宙で最も使用される合金
- 高強度・耐熱性に優れる
- 反面、加工は難しい部類に入る
純チタン(Grade1~4)
- 軽くて耐食性が高い
- 強度よりも化学安定性を重視する用途向け
- 合金チタンよりやや加工しやすい
チタン加工の用途例
- 航空機部品(ブラケット、フレーム)
- 医療インプラント
- 半導体製造装置パーツ
- スポーツ用品(ゴルフヘッド、自転車部品)
- 化学プラントの配管部品
高強度・軽量・耐食性の3拍子なので、耐久性と信頼性が求められる分野で選ばれる金属です。
加工メーカーを選ぶ際のチェックポイント
チタンは加工難易度が高いため、外注する際は次のポイントを確認するのがおすすめ。
- チタン加工の実績(製品例・加工サイズ)
- 専用の切削工具と設備があるか
- 高圧クーラント、剛性の高い治具の有無
- 歪み・反りを抑えるノウハウ
- 材料調達から検査までの一貫対応
特に、「Ti-6Al-4Vの加工経験」がある企業は信頼度が高いと言えます。
まとめ
チタンは優れた特性を持ちながらも加工が難しい金属です。
しかし、
- 工具選定
- 切削条件
- クーラント管理
- ビビり対策
といったポイントを押さえることで、安定した品質とコストを両立できます。
航空・医療・産業機器分野など、高精度が要求される現場では欠かせない材料であり、今後も需要は拡大し続けると考えられます。
チタン加工の外注や技術情報が必要な際は、ぜひ気軽にご相談ください。



