機械部品の製造や設計において、表面粗さ は仕上げの品質や機能性を左右する重要な要素です。特に、図面上で表面粗さを正しく指示することは、加工精度やコストに直結します。今回は、表面粗さの表示方法、記号の意味、数値の見方 について詳しく解説します。
1. 表面粗さとは?その重要性
表面粗さとは、部品の表面の凹凸の度合いを表す指標です。滑らかな仕上げが求められる場合や、あえて適度な粗さを持たせたほうが良い場合など、用途に応じた指定が必要になります。
表面粗さの影響
表面粗さは、以下のような要素に影響します。
影響項目 | 具体的な影響 |
---|---|
摩擦・摩耗 | 粗すぎると摩擦増大、滑らかすぎても潤滑性低下 |
シール性 | すき間が大きくなると液体・気体の漏れが発生 |
疲労強度 | 微細な傷が応力集中を生み、疲労破壊を引き起こす |
接着・塗装 | 粗すぎると密着不良、滑らかすぎると密着不足 |
電気・熱伝導性 | 表面が粗いと接触面積が減少し、伝導性が低下 |
例えば、軸受(ベアリング)や摺動部品は低い表面粗さ(滑らかな仕上げ)が必要ですが、塗装前の表面には適度な粗さが求められます。
2. 表面粗さの記号とその意味
表面粗さは JIS B 0031(日本工業規格)に基づいて、専用の記号 で指示されます。
旧々記号 JISB0031:1982 | 旧記号 JISB0031:1994 | 現記号 JISB0031:2003 | 仕上げ程度 |
---|---|---|---|
![]() | ![]() | ![]() | 精密仕上げ。非常に精密な面。加工コストは高い。 バフ仕上げなどの専用の加工法により仕上げる。 |
![]() | ![]() | ![]() | 上仕上げ。精密な仕上げ面。 穴や軸のはめあい面などに使用される。 |
![]() | ![]() | ![]() | 並仕上げ。一般的な加工面。 旋盤やフライス盤などを使用して経済的に加工できる。 |
![]() | ![]() | ![]() | 粗仕上げ。 加工はするが重要でない面などに使用する。 |
![]() | ![]() | ![]() | 生地。 除去加工しない。 |
3. 表面粗さの数値の見方
表面粗さは、主に以下のパラメータで表されます。
パラメータ | 意味 |
---|---|
Ra(算術平均粗さ) | 最も一般的な指標。平均的な凹凸の高さを示す |
Rz(十点平均粗さ) | ピークと谷の高さの平均 |
Ry(最大高さ粗さ) | 最も高いピークと最も低い谷の差 |
Rq(二乗平均平方根粗さ) | Raと類似した値で、より厳密な計算式を用いる |
数値の目安(Ra基準):
- 0.2μm以下 → 鏡面仕上げ(研磨・ラッピング)
- 0.4~1.6μm → 摺動部・精密部品(研削)
- 3.2~6.3μm → 一般機械加工(フライス・旋削)
- 12.5μm以上 → 粗加工・鋳造品(鋳造・鋳鉄加工)
4. 表面粗さと加工方法の関係
指定した表面粗さに応じて、適切な加工方法を選定する必要があります。
加工方法 | 達成可能なRa値 |
---|---|
旋削(切削加工) | 1.6~12.5μm |
フライス加工 | 3.2~25μm |
研削(グラインディング) | 0.2~3.2μm |
ホーニング | 0.1~0.8μm |
ラッピング(鏡面仕上げ) | 0.05~0.2μm |
(例)
- 軸受の内径(精密摺動部) → Ra 0.2~0.8μm(研削・ホーニング)
- 一般的なシャフト外径 → Ra 1.6~3.2μm(旋削・研削)
- 鋳造品の加工なし部分 → Ra 12.5μm以上(鋳造そのまま)
5. まとめ
✔ 表面粗さは機械部品の性能に直結する重要な要素
✔ 記号を理解し、適切に指定することが重要
✔ Ra・Rz・Ryなどのパラメータの意味を理解する
✔ 加工方法との関係を考慮し、適切な数値を指定する
表面粗さの適切な管理は、製品の性能向上、加工コスト削減、製造トラブル防止につながります。ぜひ、正しい表面粗さの指定を実践してみてください!