タップ加工はねじ穴を形成する重要な工程ですが、加工中にタップが折れてしまうというトラブルは現場でも頻発します。タップ折れは、ワークを破損させたり、再加工コストを増大させたりと、生産性に大きく影響します。
今日は、タップが折れた際の正しい除去方法と、再発を防ぐための現場対策を詳しく解説します。
なぜタップは折れるのか?主な原因を知る
まず、折れたタップを除去する前に、なぜ折れたのかを理解しておくことが重要です。原因を突き止めないまま再加工すると、同じトラブルを繰り返す可能性があります。
主な原因5つ
- 切削トルクの過大
→ 加工材が硬い、または切削条件が合っていない場合に発生。 - 切りくずの排出不良
→ 下穴深さが深い、切削油が不足している、またはタップ形状が不適切。 - 芯ズレ・傾き
→ 下穴とタップ軸がずれていると、側面に過大な力がかかり破損しやすい。 - 工具の摩耗・損傷
→ 長時間使用による刃先摩耗や、微小な欠けの見落とし。 - 材質選定ミス
→ 難削材に汎用タップを使用しているケース。
折れたタップの除去方法|現場で使える実践テクニック
タップが折れた場合、無理に引き抜こうとするとワークを損傷する恐れがあります。
以下の手順を状況に応じて選びましょう。
タップリムーバー(タップ抜き工具)を使用する
最も一般的で安全な方法です。
専用のタップリムーバー(タップエキストラクター)を使用し、タップ溝に爪を差し込んで逆回転させることで除去します。
- 対応サイズ:M3〜M20程度
- メリット:ワークへのダメージが少ない
- 注意点:折れ込みが深すぎる場合は爪が届かないことも
放電加工(EDM)で除去する
放電加工機を使用し、折れたタップを溶融除去する方法です。
硬いハイス鋼や超硬タップでも対応可能で、精度を保ちながら安全に除去できます。
- メリット:焼き付き・深い折れ込みにも対応
- デメリット:設備と時間が必要(コスト増)
ドリルやカーバイドバーで除去する
簡易的な方法として、超硬ドリルで中心を狙って削り出すという手法もあります。
ただし、ズレると下穴を傷つけるため、高精度加工には不向きです。
- 対応:軽度な折れ込みや応急処置に有効
- 注意:ドリルの芯ずれ対策必須
酸や薬品を使う化学的除去
一部の現場では、硝酸などの酸でタップを溶解する方法も採用されています。
ただし、安全管理が必要で、ワーク材質によっては腐食のリスクもあります。
- 利用例:ステンレスやアルミワークなどに限定的に使用
- 注意:薬品使用は設備環境に左右される
折れたタップ除去の際に避けたいNG行為
- ペンチやプライヤーで無理に回す
- 強い衝撃を与えて折れ込みを深くする
- 鋼製ピンなどを叩き込む
これらは穴を拡大させたり、ねじ山を破損させる原因となるため、避けましょう。
タップ折れを防ぐための予防策
- 切削条件の見直し
→ 適正な回転数・送り速度を守る。特に深穴では断続切削が有効。 - 切削油の適正供給
→ 潤滑と冷却を確実に。水溶性・不水溶性を加工材に応じて選択。 - 下穴径の確認
→ 小さすぎるとトルク過大に。JIS推奨径を確認する。 - タップ工具の定期交換
→ 摩耗を感じたら早めに交換。目視点検も重要。 - 難削材には専用タップを使用
→ チタン・SUSなどには専用コーティング品を採用。
まとめ:焦らず、正確に対処することが最善策
タップ折れは現場では避けられないトラブルの一つですが、正しい除去手順と予防策を知っておくことで、被害を最小限に抑えられます。
現場では焦らず、まず「折れ込みの深さ・材質・除去手段」を冷静に判断することが重要です。
また、再発を防ぐためには、日常的な工具管理と加工条件の見直しが欠かせません。


