ガス抜き(エアベント)の役割
金型のガス抜きとは、溶融樹脂や溶湯をキャビティへ充填する際に発生する空気・揮発ガスを排出する仕組みです。
もしガスが逃げられない状態になると、
- 圧縮熱による焼け(バーンマーク)
- 成形品内部のボイド(空洞)
- 樹脂が最後まで届かないショートショット
- 合流部のウェルドライン強度低下
といった不良につながります。
ガス抜きは、成形品の外観や寸法精度、機械的強度に直結するため、金型設計の中でも非常に重要な要素です。
ガスが発生する原因
成形時に型内に発生するガスは、単なる空気だけではありません。
- キャビティ内の空気
充填開始時に内部に残っている空気が逃げ切れないと圧縮されてトラブルになります。 - 樹脂から発生するガス
含水樹脂では加熱によって水蒸気が発生します。また、添加剤や低分子成分の熱分解によりガスが生じることもあります。 - 離型剤や油分の揮発
成形条件によっては金型に塗布した離型剤や油分が揮発し、ガスとして溜まることがあります。
ガス抜き不足で起こる具体的な成形不良
- ショートショット
樹脂が型の端部まで到達せず、製品が未充填状態になる。 - バーンマーク(ガス焼け)
圧縮されたガスが高温燃焼し、黒や茶色の焦げ跡が付着。特に外観部品では致命的。 - ボイド(気泡)
成形品内部に空洞が残り、強度低下や外観不良の原因になる。 - ウェルドラインの強度低下
複数の樹脂フローが合流する部分でガスが残留し、分子結合が弱くなる。 - ヒケや寸法ムラ
ガスの影響で樹脂の流動性が阻害され、収縮の不均一につながる。
ガス抜きの方法と設計技術
パーティングラインのベント溝
- 最も一般的な方法。
- キャビティ終端部に幅2~5mm、深さ0.01~0.03mm程度の微細な溝を設け、ガスだけを逃がす。
- 溝が深すぎると樹脂バリが発生するため、材質に応じた設計が必要。
- 汎用樹脂(PP・PEなど):0.02~0.03mm
- エンプラ(PC・PBTなど):0.01~0.02mm
- 熱硬化性樹脂:さらに浅めに設定
ピンやインサート部でのガス抜き
- 押出ピンやスライド部のクリアランスを利用。
- メンテナンス性が高く、詰まりにくい利点がある。
ガス抜きピン(ベンチレーションピン)
- 意図的に設けるピンで、ピン周囲にガスを逃がす隙間を設計。
- 成形中に自己清掃作用があり、安定した排出が可能。
多孔質金型(ポーラスベント)
- 多孔質金属をキャビティに組み込み、型全面からガスを吸引。
- 精密成形や薄肉製品に効果的。
- 真空ポンプとの併用で効果大。
真空成形方式
- 成形直前にキャビティを真空状態にしてから樹脂を充填。
- 医療機器や光学部品など、高精度部品の成形に多用される。
ガス抜きの設計・運用で注意すべき点
- ガスが溜まりやすい位置を特定
- 流動解析CAEを活用し、フローフロントの合流部や最終充填部にベントを配置。
- ベント溝の精度維持
- 成形を繰り返すと樹脂かすや油分で詰まりやすい。定期的なクリーニングが必須。
- 溝寸法の調整
- バリが出る場合は溝を浅く修正。ガス焼けが残る場合は広げるなど、現場で微調整が必要。
- メンテナンス計画
- 生産ロットごとにベント清掃をルール化すると不良率を大幅に下げられる。
最新のガス抜き対策技術
- CAEによる樹脂流動解析
樹脂の流れをシミュレーションし、ガス溜まりを事前に予測してベント設計を最適化。 - ガス抜き専用部品の標準化
市販のガス抜きピンやポーラスベント材を活用し、金型製作コストを抑えながら信頼性を確保。 - 真空吸引システムの導入
精密部品では真空ポンプでガスを強制排出し、不良ゼロを目指す取り組みが広がっている。
まとめ
金型のガス抜きは、
- ショートショット
- ガス焼け
- ボイド
- ウェルドラインの強度低下
といった成形不良を防ぐための必須要素です。
適切な設計(ベント溝の寸法・位置)、最新技術の導入(CAE解析・真空システム)、そして定期的なメンテナンスを組み合わせることで、
- 不良率の低減
- 金型寿命の延長
- 成形品質の安定
を実現できます。
ガス抜きは目立たない要素ですが、「成形品の出来を左右する縁の下の力持ち」とも言える存在です。

