製品開発において、「試作」は非常に重要な工程です。その中でも「原理試作」と「量産試作」は、それぞれ異なる目的と役割を持っています。試作の段階を正しく理解しないと、開発の遅延やコストの増加につながる可能性があります。
今回は、原理試作と量産試作の違い、目的、実施する際のポイントを詳しく解説します。
原理試作とは?
原理試作(概念試作、PoC試作とも呼ばれる)は、開発初期段階で行う試作であり、主に以下の目的で実施されます。
原理試作の目的
✅ 技術的な検証
新しい技術やアイデアが実際に機能するかを確認する
✅ 基本動作の確認
設計通りに動作するか、原理的に問題がないかを確かめる
✅ 課題の洗い出し
技術的な課題を明確にし、設計の改善点を見つける
原理試作の特徴
- 試作数が少ない(1台~数台程度)
- 外観や製造方法は重視しない(機能が正しく動けばよい)
- 手作業や簡易的な加工が多い(3Dプリンター、手作り基板、既存の部品を流用 など)
原理試作の具体例
例えば、新しいモーター制御技術を開発する場合、原理試作では「モーターが想定通りの動きをするか」を確認するための試作を行います。外装デザインや量産性は考慮せず、まずは機能が実現可能かどうかを最優先にします。
量産試作とは?
量産試作は、原理試作を経た後、実際に製造・販売するための製品に近い形で試作を行う段階です。
量産試作の目的
✅ 量産設計の最適化
大量生産に適した設計になっているか確認する
✅ 製造プロセスの検証
生産ラインで安定して製造できるか評価する
✅ 品質試験・信頼性評価
耐久性や安全性をチェックし、規格や基準を満たしているか確認する
量産試作の特徴
- 量産を想定した材料・製造方法を採用(射出成形、金型加工、SMT実装など)
- 試作数が多い(数十台~数百台)
- 外観や機能が最終製品に近い
- 量産コストや工程の問題点を洗い出す
量産試作の具体例
例えば、スマートフォンを開発する場合、量産試作では「実際の製造ラインで組み立てがスムーズにできるか」「耐久テストで問題がないか」などを確認します。この段階で発見された課題を修正し、最終的な製品に仕上げていきます。
原理試作と量産試作の違いを比較
項目 | 原理試作 | 量産試作 |
---|---|---|
目的 | 技術検証・動作確認 | 量産設計・生産検証 |
試作数 | 1台~数台 | 数十~数百台 |
重視する点 | 機能の実現性 | コスト・生産性・品質 |
使用部品 | 既存部品や手作業加工 | 量産を想定した部品 |
製造方法 | 3Dプリンター・手加工など | 射出成形・金型加工など |
試験内容 | 機能テスト | 信頼性・耐久性・量産テスト |
原理試作と量産試作の進め方
🔹 原理試作の進め方
- アイデア・設計の検討(基本的な機能や技術の方向性を決める)
- 簡易的な試作(3Dプリンターや手作業で試作品を作成)
- 動作検証・技術評価(仕様通りに動くかを確認)
- 課題の洗い出し・改善(問題点を明確にし、次の試作に活かす)
🔹 量産試作の進め方
- 量産を考慮した設計(製造しやすい形状・コスト最適化を検討)
- 試作の製造(実際の生産工程で試作品を作る)
- 量産テスト(組み立てや工程の最適化を確認)
- 品質評価(耐久試験・信頼性試験を実施)
- 量産開始(最終的な修正を行い、量産へ移行)
まとめ:試作工程を適切に進める重要性
製品開発では、原理試作と量産試作の役割を理解し、それぞれの目的に応じた試作を行うことが重要です。
✅ 原理試作は「技術検証」
→ アイデアを形にし、技術的な課題を見つける段階
✅ 量産試作は「製品化に向けた最終調整」
→ 量産を想定し、コストや品質を最適化する段階
どちらの試作も欠かせないプロセスであり、適切に進めることで開発リスクを減らし、スムーズな量産へとつなげることができます。
今後の製品開発において、試作工程をしっかり計画し、よりスムーズな開発を目指しましょう!