トロコイド加工とは?|高効率・高精度を両立するエンドミル加工法を徹底解説

金属加工基礎知識

トロコイド加工の基本再確認

トロコイド加工は、エンドミルの中心が「円弧+直線」の軌跡を描きながら被削材を削る方法です。
従来の荒取り加工や等高線加工と比べて、切削負荷を一定に保ち、工具寿命や加工精度を大幅に向上させることができます。

  • Trochoid(トロコイド):円運動する点が描く軌跡のこと
  • 特徴:切削負荷分散・高能率加工・難削材でも安定

トロコイド加工が生まれた背景

従来加工では、刃先に一時的に大きな負荷が集中しやすく、以下の問題がありました:

  1. 工具摩耗・刃欠けが発生しやすい
  2. 深穴や硬質材加工でのビビリ
  3. 高精度加工での寸法変動

トロコイド加工はこれを解決するために、工具が常に軽い切削負荷で回転する軌跡を設計することで、加工精度と工具寿命を両立しました。

トロコイド加工の理論

切削負荷の均一化

工具は常に部分的にしか材料に接触していないため、切削抵抗が均等化されます。
これにより、刃欠け・振動・発熱を最小化できます。

送り・切り込みの分離

  • 側面切り込み(ae):浅く設定
  • 軸方向切り込み(ap):深く設定
    → 高速切削を維持しつつ、工具全長を有効活用できる。

CAMプログラムでの軌跡生成

CAMソフト(Mastercam、Fusion360、HyperMILLなど)では、トロコイド専用の荒取りパスを自動生成可能。

  • 切削負荷を一定化
  • 加速度制御や方向転換を最適化
    → NCプログラムの精度向上

トロコイド加工の応用例

高硬度材の荒取り

材料効果
ステンレス(SUS304)工具寿命2倍、ビビリ防止
チタン合金(Ti-6Al-4V)熱負荷抑制、刃欠け激減
焼入れ鋼(HRC50)加工時間30%短縮
アルミ材(A5052)高速送り可能、切りくず詰まり少

3D形状の加工

  • 航空部品の翼型加工
  • 金型の複雑形状仕上げ
  • 自動車部品の凹凸面荒取り

トロコイド加工は、従来では難しかった深いポケットや複雑な3D形状も安定して加工可能です。

適した工具・刃物条件

条件推奨
材質超硬・コーティング超硬(TiAlN, AlCrN)
刃数2〜3枚刃(荒取り)、4枚刃以上(仕上げ)
刃先形状スクエアエンド、ロングネックは避ける
冷却ミスト・油性切削油で切りくず除去

コツ

  • 小径エンドミルでも負荷分散可能
  • 深ポケット加工時の熱集中を防止
  • トロコイド+ボールエンドミルの組み合わせで荒取り→仕上げが効率的

加工パラメータの最適化例

項目一般的目安
切削速度 (Vc)80〜200 m/min(材質依存)
送り量 (fz)0.05〜0.2 mm/tooth
側面切り込み (ae)工具径の10〜20%
軸方向切り込み (ap)工具径の1〜1.5倍
送り方向上向き(アップカット)推奨

ポイント:

  • aeは浅く、apは深く設定
  • 刃先全長を効率的に利用し、工具寿命を延ばす

トロコイド加工のメリットまとめ

  1. 切削負荷が一定で刃欠け防止
  2. 工具寿命が延び、摩耗均一
  3. 高速・高送りが可能で生産性向上
  4. 切りくず排出性が良く、加工面安定
  5. 難削材でも安定加工可能

デメリット・注意点

  • NCプログラムは複雑
  • マシニングの高応答制御が必要
  • 浅切り込みで加工時間がやや長くなる場合あり
  • CAMソフトで最適軌跡生成を前提に設計する必要

従来加工との比較

項目従来側面加工トロコイド加工
切削負荷変動大常に一定
工具寿命短い長い
加工時間短いがリスク大やや長いが安定
チップ排出悪い良好
熱発生多い少ない

トロコイド加工NCプログラム例

%
O1001 (トロコイド加工サンプル)
(T1 : 直径6mmエンドミル)
(G17 XY平面, G90 絶対座標)

G21 (mm単位)
G54 (ワーク座標系選択)
S8000 M03 (主軸回転 8000rpm, 正転)
G00 X0 Y0 Z5 (安全高さに移動)

Z0.5 (ワーク表面0.5mm上)
G01 Z-2 F200 (切り込み深さ2mm, 送り200mm/min)

(トロコイド加工開始)

100 = 2 (ポケット幅)
101 = 3 (ポケット長)
102 = 6 (エンドミル径)
103 = 2 (切込み深さ)
104 = 200 (送り速度)
110 = 0 (初期Xオフセット)
111 = 0 (初期Yオフセット)
120 = 0 (角度)

(ループでトロコイドパス)
G01 X[#110 + #102/2] Y[#111] F#104
G02 X[#110 + #102/2] Y[#111 + #102] I0 J#102/2 F#104
G01 X[#110 + #101 – #102/2] Y[#111 + #102] F#104
G02 X[#110 + #101 – #102/2] Y[#111] I0 J-#102/2 F#104
G01 X[#110 + #102/2] Y[#111] F#104

G00 Z5 (安全高さに戻る)
M05 (主軸停止)
M30
%

プログラムのポイント

  • G02 / G03:円弧補間でトロコイド軌跡を描く。
  • 切込み深さやポケットサイズをパラメータ化(#100#101など)すると変更が容易。
  • 直線ポケットの場合、円弧と直線を組み合わせて段階的に削る。

まとめ

トロコイド加工は、高能率・高精度・工具寿命延長を同時に実現する加工法です。
特に難削材や複雑形状加工では、従来法より安定性・生産性ともに大幅に向上します。

  • 荒取りではトロコイド加工
  • 仕上げではボールエンドミルやコーナーRエンドミル

の組み合わせが、現場では効率的です。

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